▷この記事で伝えること
- ゾンビたばこ(エトミデート含有リキッド)の実態
- 実際にあった体験談と健康被害
- 専門家による警鐘と規制の流れ
- なぜ若者に広まるのか?構造と心理
- 日常生活に潜むリスクの見分け方
■ なぜ“ゾンビ”と呼ばれるのか?
2024年末ごろから沖縄で若者の間に急速に広まった、「ゾンビたばこ」や「笑気麻酔リキッド」と呼ばれる違法な電子タバコ用リキッド。その正体は、麻酔導入剤「エトミデート」という医療用薬物です。
元々は病院の麻酔処置で使用されていたもので、本来は医療機関以外での使用が許されないものですが、これをリキッド化して電子タバコで吸引すると「意識がとぶ」「身体が勝手に動く」「倒れてしまう」といった異常反応を引き起こします。
倒れて白目をむく、手足を震わせて徘徊する、身体の制御を失って転倒・事故を起こす…その姿から「ゾンビ」と揶揄されるようになったのです。
■ 実際に起きた“リアルな被害”
沖縄タイムスが報じた20代女性の体験は、まさにこの危険性を象徴するものでした。
商業施設の駐車場で吸引した直後、彼女は意識を失い、地面に倒れ込んで頭部を強打。救急搬送された際には、「頭がひどく痛く、目の前がグルグルして言葉も出なかった」と語っています。
この女性は「殺虫剤にやられた虫みたい」と自身を形容し、「誰が死んでもおかしくない」と後に振り返りました。
また、SNSでも「1回吸っただけで震えが止まらなかった」「吸っている友人が突然倒れた」「“ノリで一口”が冗談にならなかった」といった投稿が相次いでいます。
■ 専門家の分析:何が問題なのか?
● 厚生労働省の措置と指定薬物化
2025年5月、厚労省はこのエトミデートを「指定薬物」とし、所持・使用・輸入・販売を全面的に禁止しました。違反者には3年以下の懲役または300万円以下の罰金、営利目的の場合は最大5年以下の懲役など、厳しい処罰が科されます。
また、沖縄県では「“笑気麻酔”という名前から軽く見られがちだが、れっきとした違法行為であり、命に関わる」として、医療・教育・行政が連携して啓発に取り組んでいます。
● 法律の壁:「知らなかった」では通用しない
弁護士JPの解説によれば、たとえ本人が「薬物と知らなかった」と主張しても、刑法38条3項により「過失による違法薬物の所持」は原則処罰対象とされます。
つまり、「ノリで」「好奇心で」「友達からもらった」という軽率な動機であっても、法的な責任を免れることはできないのです。
■ 若者の“入り口”になっている背景
専門家や教育関係者が警鐘を鳴らすもう一つの理由が、「これが“最初の一歩”になってしまう可能性がある」ことです。いわゆるゲートウェイドラッグ(本格的な薬物使用への入り口)として、軽い気持ちで始めたものが、さらに強い依存性のある薬物へと連鎖していくケースも指摘されています。
とくにSNSやクラブ、飲食店の裏ルートなどを介し、**「カッコいい」「映える」**というイメージで広まっている点が深刻です。
吸引している姿を撮影して拡散し、それが“ちょっとしたステータス”になる風潮が、被害の拡大を招いています。
■ 考察:なぜ「やってしまう」のか?人はどこで判断を誤るのか
笑気麻酔リキッド(ゾンビたばこ)は、元々は医療用の麻酔導入剤だったにもかかわらず、見た目や名前の印象、そして吸引時の“浮遊感”によって「面白い」「合法っぽい」「SNS映えする」と誤解されやすい性質を持っていました。
ここで重要なのは、「これはヤバいと分かっていたのに、なぜか止められなかった」という証言が多いことです。
→ たとえば、
- 「友達が吸ってて、空気を壊したくなかった」
- 「“リキッド”ってだけで、タバコの延長だと思ってた」
- 「ちょっとだけなら大丈夫だと思ってた」
こうした“ほんの少しのズレ”が、命に関わる選択につながるのです。
■ “知っていれば回避できた”という構造
沖縄県の広報資料では、「買わない・使わない・関わらない」を3原則として掲げています。
しかし、それを知る前に体験してしまった人々も多く、「あの時、正しい情報が届いていれば」と後悔する声もありました。
情報にたどり着くスピードは人によって違います。特に未成年や若年層は、学校・親・周囲の大人たちからの情報が全てです。
仮に「規制された成分」「違法」と知らなかったとしても、法的には免責されません。それが現実です。
■ 周囲にいたら、どう声をかけるべきか
誰かが「これ吸ってみる?」と言ってきたとき、どう断るかは、意外と難しいものです。
専門家は「No」と言う勇気よりも、「一緒に抜け出す選択」を提案することが重要だと語ります。
→ たとえばこんな言い方:
- 「ちょっとヤバいのかも、外で空気吸わん?」
- 「実は●●がニュースで逮捕されたって見たから、うちらも巻き込まれたら嫌だよね」
- 「そのリキッド、なんか薬っぽいやつ入ってるらしいよ」
“否定”ではなく“共有”の形で注意を促すと、場の空気を壊さずに抜け出せる可能性が高くなります。
■ 家庭や教育現場でもできること
- 用語の認知を広げる
「ゾンビたばこ」「笑気麻酔リキッド」など俗称を知っておくことで、検索や相談の糸口になります。 - SNSとの連動に気を配る
使用動画が拡散されていた場合、その投稿を共有して「こういうのに近づかないようにしよう」と話題にできます。 - 相談できる場の存在を伝える
仮に友達が関わってしまっても、「保健室」「LINE相談」「匿名通報フォーム」などの存在を知っていれば、最悪の事態を避けられます。
🎯まとめ:自分は大丈夫、が一番危ない
“ゾンビたばこ”という俗称には、笑いを誘うような響きがあります。
しかし実態は、命に関わる薬物による中毒症状と法的リスクです。
体が動かなくなる、意識が飛ぶ、知らない間に傷害や事故の加害者・被害者になる。
「ちょっと一口」の代償は、あまりにも大きいのです。
これは、特定の地域や属性だけの問題ではありません。
夜の街やSNSの中で、誰にでも近づいてくる問題です。
そして、それを遠ざける力のひとつが「知識」です。
知っているから選べる。知っているから止められる。
この記事が、あなたや大切な人を守る一歩になれば幸いです。
