■JRAでゼロから騎手になるには、学校卒業が基本ルート。ただし例外はある
競馬ファンなら一度は疑問に思ったことがあるかもしれません。
「JRAの騎手になるには、絶対にJRA競馬学校を卒業しないといけないのか?」
この問いに対する答えは、
👉 **「原則としてYES。しかし例外的なルートも存在する」**です。
JRAは、中央競馬の安全性・公正性を担保するための教育機関として、1982年に「JRA競馬学校」を設立しました。ここで3年間の教育課程を修了しなければ、JRAの騎手免許試験を受験することはできません。
これは公式ガイドブックや制度概要にも明記されています。
■ 騎手までの道のり:JRA競馬学校を経たルート(基本編)
① 入学試験(年1回)
- 応募資格には年齢制限(15〜20歳)、身長159cm以下、体重47kg以下、視力・運動能力などが含まれます
- 試験内容は:学科試験・面接・運動機能・体力測定・騎乗模擬テストなど
② 騎手課程(3年間)
- 寮生活+騎乗・座学・礼儀訓練を含むハードな訓練体制
- 馬の手入れや体重管理など、実務もすべて習得
- 実習での成績や態度によっては退学・留年もあり
③ 卒業 → 騎手免許試験へ進む
- 修了者はJRAの「騎手免許試験」受験資格を得られる
- 試験合格後、JRA所属の新人騎手としてデビューできる
■ なぜそこまで“学校卒業”が重要視されるのか?
JRAがこの学校卒業を条件としている最大の理由は、「公正・安全なレース運営」にあります。
体重・バランス感覚・馬上での判断力といった技能はもちろん、騎手という職業に求められる“競馬倫理”や“観客に見られる責任”を徹底して教育する場が必要だからです。
また、中央競馬では年間数百万人が観戦・馬券購入を行う巨大市場であるため、ルールや常識、危機対応力まで含めた人材教育が求められるのです。
■ では、JRA競馬学校を通らずに騎手になるルートは存在するのか?
ここからが本題です。
JRAの門を叩かずに、中央競馬で騎手になる方法はないのでしょうか?
その答えは──
👉 **「過去の実績を持つ“例外者”に限り、別ルートが存在する」**です。
JRAは一定条件下において、「学校を経ていないが、既に他の騎手資格を持っている者」に対して特例的に免許試験を開放しています。
■ 【例外1】海外のプロ騎手がJRA免許を取得するケース
JRAは、フランス・香港・オーストラリアなど、騎手ライセンス制度が確立している国の現役騎手に対して、短期騎手免許/通年騎手免許を発行しています。
🔍 具体例:クリストフ・ルメール騎手
- フランスでG1制覇を含む多くの実績を持つ
- 来日後、短期免許→JRA免許試験に合格し通年免許を取得
- 現在はJRAのトップジョッキーの1人に
こうした特例ルートでは、以下の審査が課されます:
| 審査項目 | 内容例 |
|---|---|
| 騎乗技術評価 | 映像・成績をもとにJRAが審査 |
| 健康・身体検査 | 体重・視力・反射能力など |
| 筆記試験・面接 | 日本の競馬制度理解・言語対応力など |
※一部では日本語の筆記試験が行われるケースもあり、ハードルは決して低くありません。
■ 【例外2】地方競馬から中央(JRA)に転入するルート
JRA競馬学校を経ていない場合でも、地方競馬(NAR)での実績がある者はJRA試験を受ける資格が与えられる場合があります。
これは、**2003年に導入された「地方競馬出身者に対するJRA試験制度」**によって可能となったルートです。
🔍 具体例:安藤勝己 騎手(元・笠松)
- 地方で通算3,000勝以上の記録を持ち、2003年にJRA騎手免許試験を突破
- 移籍後もG1勝利を重ね、名実ともに“地方の星”として活躍
このルートを利用した他の著名騎手には以下のような面々がいます:
- 岩田康誠(園田)
- 内田博幸(大井)
- 小牧太(園田)
◉ 移籍の条件(おおまか)
- 地方競馬での騎乗実績(成績・騎乗数)
- 技術・モラル面での高い評価
- 年齢・健康状態・筆記面接通過
■ 制度としての“堅さ”は何を守っているのか?
JRAの制度は、表面上は「閉鎖的」「狭き門」にも見えます。
しかし、その厳格さには理由があります。
◉ 1:巨大な市場を背負う公共性
JRAは、国(農林水産省)管轄の公益法人であり、公正・信頼・安全の3本柱が絶対条件です。
「1人の騎手の過失が、何万人の馬券購入者に損失を与える可能性がある」という点は、民間のプロスポーツとは異なる緊張感を持ちます。
◉ 2:事故のリスクと命の重み
落馬や馬の故障といったリスクは常に存在します。JRAでは、事故が発生した際に責任の所在を明確にし、再発防止の教育が徹底されます。
このためにも、JRAが認定する教育課程を経た人材しか騎手として認めない方針が基本です。
■ 若者にとっての「狭すぎる門」?
一方で、ここまで厳格な制度が続く中、昨今の若年層からは次のような懸念の声も聞こえてきます。
- 「身長や体重の基準が厳しすぎる(成長期で外れてしまう)」
- 「スマホ持ち込み禁止など、現代の高校生には過酷」
- 「退学・留年率が高く、3年通ってもデビューできない可能性がある」
たとえば2025年の第42期生では、入学者7名のうち4名が退学、3名が留年という“全滅”の結果となり、JRA史上初めて「新人騎手ゼロ」の年となりました。
■ 制度を維持すべきか、開くべきか?
現時点では、制度を大きく変える兆しはありません。
しかし、以下のような形での進化が今後の焦点となるかもしれません。
🔸 【可能性1】地方からの“育成提携ルート”の拡大
→ NARとJRAが連携し、優秀な若手を中央に推薦する枠を増やす
🔸 【可能性2】短期養成コースの新設
→ すでに馬術競技などで実績がある社会人向けの「騎手転向支援プログラム」のような制度化
🔸 【可能性3】オンライン学科や体験講座の整備
→ “学校の中だけに閉じた教育”ではなく、外部参加型の教育体制へ
■ まとめ:道は狭くとも、例外ルートは確かにある
- JRA騎手になるには、競馬学校卒業が基本要件であることに間違いはありません
- しかし、地方競馬や海外での経験を積めば、JRA騎手免許試験への道が開かれるという現実もあります
- 若年層には厳しい制度ですが、そこに「例外」があることが、夢を諦めない希望にもつながります
今後、競馬界がより多様な人材を受け入れられる制度へと進化していくのか──
それとも「信頼性と安全性」を守るために今の体制を守り抜くのか。
そのせめぎ合いこそが、今のJRAを取り巻く“制度のリアル”なのです。
