- ❖ はじめに:なぜ「外国人のタワマン購入」が話題になるのか
- ❖ 背景①:「外国人のタワマン購入」ってどんなケース?
- ❖ 背景②:なぜ今「外国人投資家」が日本を選ぶのか?
- ❖ 背景③:どのくらい買われているのか?データで見る現実
- ❖ ここまでのポイント整理
- ❖ 空き家・管理トラブルの懸念は?
- ❖ 政策・制度はどう動いている?
- ❖ 考察:なぜ感情的な不安が生まれるのか?
- ❖ 私たちにできること
- 🏢 ※補足:空き家対策税(空室課税)の導入議論:タワマンは課税対象になるのか?
- 📝 相続登記の義務化(2024年施行):放置できない時代に突入
- 🏨 民泊規制と住環境保全:拡大と抑制のはざまで
- 🧭 まとめ:感情より構造へ、所有より共存へ
❖ はじめに:なぜ「外国人のタワマン購入」が話題になるのか
「また外国人が買ってるらしいよ」「タワマンが空き家だらけで不気味」──SNSや一部メディアで繰り返されるこのような声。
都市部のタワーマンションや戸建て住宅を外国人が投資目的で購入しているという話題は、年々注目を集めています。
しかし、その不安や感情的な反応の多くは「本当にそうなのか?」「どういう仕組みでそうなるのか?」という視点を置き去りにしがちです。
この記事では、実際に何が起きているのかを事実ベースで整理し、
私たちが冷静に判断できる材料を提供することを目的とします。
❖ 背景①:「外国人のタワマン購入」ってどんなケース?
まずは現場で起きていることを、具体例から見てみましょう。
◯ 東京で人気なのはどんな物件?
ある不動産仲介業者によると、香港人弁護士が2億円の予算で東京のタワーマンションを探していた際、
「渋谷〜表参道エリアで約50㎡、ジム付き、ブランド価値が高い物件」というような非常に明確な条件を提示してきたそうです。
しかも、**“内見した翌日には別の外国人に現金で買われていた”**という状況が頻発しています。
→ つまり、「投資」というよりも**“価値ある資産を素早く手に入れる”**という競争が起きているのです。
◯ フィリピンでは?
また海外側でも、たとえばフィリピンでプレビルド物件(建築前の予約購入)を1,600万円ほどで買ったという体験談がありました。
こちらは日本人が海外に投資する例ですが、“価格の割安さ”と“将来性”を評価しての購入で、事情は逆でも構造は似ています。
❖ 背景②:なぜ今「外国人投資家」が日本を選ぶのか?
こうした現象には明確な理由があります。
Property Accessの代表・風戸裕樹氏は、次のように分析しています。
✔ 日本の不動産が選ばれる理由
- 品質の高さ:世界でもトップクラスの建築基準と清潔さ。
- 治安と法制度の安定:所有権が外国人にも明確に保障される。
- 価格の割安感:たとえば、香港やシンガポールの同等物件と比べると3〜5割安い。
加えて現在は**円安も進行しているため、海外から見ると“お買い得”**に見えるという側面もあります。
❖ 背景③:どのくらい買われているのか?データで見る現実
noteにて分析を行った白木智洋氏のレポートでは、以下のような数字が示されています。
- 2020年時点で、日本の不動産取引における外国人投資家の割合は34%。
- ただし、2023年には世界的な金利上昇の影響で、外国人投資額が28%減少しています。
つまり、
「外国人に買い占められている」という印象とは異なり、投資は上下動のある自然な経済行動だということがわかります。
❖ ここまでのポイント整理
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 感情的な噂 | 「外国人がタワマンを買い占めている」「空き家が増えて怖い」 |
| 実態(体験談) | 競争の激化はあるが、合理的な資産取得競争としての側面が強い |
| 専門家の見解 | 日本は制度・品質面で魅力的。円安でさらに加速中 |
| データからの分析 | 一時的な投資増もあるが、全体としては波があり買い占めとは言いがたい |
❖ 空き家・管理トラブルの懸念は?
「外国人が買って放置しているせいで、空き家になって不気味」という声もあります。
これには2つの側面があります。
◯ 投資目的ゆえの“無人化”
不動産コンサルタントの寺岡孝氏は、デイリー新潮の記事で次のように指摘しています。
「新築タワーマンションに空室が増えているのは、外国人投資家が“資産保全”の目的で所有しているから。賃貸や自分で住むことが目的ではないケースが多い」
特に香港・中国などの投資家が購入する物件は、「値上がりを待って売却する」意図が強く、数年間放置されることも珍しくないとされています。
◯ 管理や規約違反のリスクも
一部では、民泊や転貸などマンション規約に反する利用をするケースもあり、居住者とのトラブルや管理組合の負担が問題化しています。
ただしこれは外国人に限らず、日本人の所有者でも起こり得ることであり、「国籍」ではなく「利用姿勢」の問題です。
❖ 政策・制度はどう動いている?
こうした状況を受け、政府や自治体もいくつかの対策を進めています。
◯ 空き家対策税(空室課税)の導入議論
2024年以降、一部自治体では空き家や長期未使用物件に対して課税する条例が導入・検討されはじめています。
タワマンのような「使われない高額物件」もその対象となる可能性があります。
◯ 相続登記の義務化(2024年施行)
所有者が不明な土地や建物を減らすため、相続された不動産の登記を義務化する制度が始まりました。
これにより、所有者の責任がより明確になり、無責任な放置を抑止する狙いがあります。
◯ 民泊規制と住環境保全
民泊新法や条例によって、用途地域や住民の合意が必要になるケースも増え、“買えば何でもできる”という時代ではなくなりつつあります。
❖ 考察:なぜ感情的な不安が生まれるのか?
✔ 現象は「可視化されないまま不安だけが残る」構造
タワマンの空き室や外国語での表記などは、「見慣れた風景の変化」として人々の心理に影を落とします。
しかし、それが**「誰のせいか?」を問うとき、“外国人”というラベルに集約されがち**です。
これは、SNSでもメディアでも、「分かりやすい犯人探し」が受け入れられやすい構造の一つです。
✔ 問題の本質は“投資姿勢”と“制度設計”
海外投資家が全員悪いわけでも、日本人なら問題がないというわけでもありません。
重要なのは、
- 誰が買ったかよりもどう使っているか
- 使い方に問題があるなら、制度がどう対処するか
という2つの視点です。
❖ 私たちにできること
✔ 1. 不安よりも情報をもとに理解する
“誰かが買ってるらしい”という不安に流されず、信頼できる専門家や統計データに基づく知識を持つことが、冷静な判断を可能にします。
✔ 2. 自治体の動きをチェックする
タワマンが多い地域では、空き家対策や外国人所有に関する条例が制定されている場合があります。地域の議会資料などを定期的に確認することもおすすめです。
✔ 3. 利用ルールの明確化と対話
管理組合レベルでも、「外国人禁止」ではなく、「住人としてのルールや意識を共有できる仕組みづくり」が鍵です。
国籍ではなく、“住む姿勢”で線を引くことが、分断ではなく共存につながります。
🏢 ※補足:空き家対策税(空室課税)の導入議論:タワマンは課税対象になるのか?
いま最も注目されているのが、神戸市が検討している「空室税」の導入です。これは、特にタワーマンションにおける実質的な“空き家”、つまり「所有されているが実際には誰も住んでいない物件」を対象に課税する制度です。
● 背景にあるのは「住民票未登録問題」
神戸市の久元市長は、次のように指摘しています。
「新築タワマンで住民票が登録されていない部屋が多数ある。
管理や防災の観点からも深刻な問題であり、空室に対して一定の課税を行う必要がある」
実際、東京・晴海フラッグでは、竣工した約2,690戸のうち30%が住民登録されていないと報じられ、名義はあっても“実態がない”住宅が多く含まれていることが浮き彫りになりました。
● 「住んでいない=課税」は可能なのか?
技術的には難しい点もあります。現状では「居住の有無」は必ずしも明確に定義できません。
たとえば:
- 住民票未登録だが、週末には利用している
- 賃貸に出す準備中の空き室
- 資産保全や投資目的で保有しているだけ
これらをすべて“悪質”として一律に課税することは、個人の資産権を侵害するおそれもあるため、制度設計は極めて慎重に進められています。
● それでも「空室税」が注目される理由
・防災面のリスク(災害時に空室だと救助や安否確認が遅れる)
・管理組合の負担(ゴミ出しルールが守られない、共有部が荒れる)
・地域コミュニティの希薄化
といった課題を解決するには、空き室がもたらす“外部不経済”に対してペナルティを設ける必要があるとする意見も強く、今後は「使用実態に応じた課税制度」が議論の中心になっていくでしょう。
📝 相続登記の義務化(2024年施行):放置できない時代に突入
2024年4月から、**相続登記がついに「義務化」**されました。これまでは「努力義務」とされていましたが、所有者不明土地の増加を背景に、3年以内の登記申請が法律で定められたのです。
● なぜ義務化されたのか?
日本には現在、所有者が不明のまま放置されている土地が**約410万ha(北海道の面積の約1.1倍)**もあると言われています。
これにより:
- 売買・再開発が進まない
- 公共インフラの整備が困難になる
- 固定資産税も徴収できない
といった深刻な問題が生じており、「誰のものか分からない土地」は社会的コストになっているのです。
● 義務の内容と罰則
- 相続が発生したと知った日から3年以内に登記申請が必要。
- 正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
ただし、実務では戸籍・遺産分割協議書・印鑑証明など複雑な書類が必要で、一般人が自力で行うのは難しい場面も多いです。
司法書士など専門家に依頼する費用や手続きの煩雑さが、今後の課題として残ります。
🏨 民泊規制と住環境保全:拡大と抑制のはざまで
近年のインバウンド需要の拡大により、民泊は急速に広がりました。
しかし、住民とのトラブルや安全性の懸念から、2018年に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行されました。
● 民泊新法のポイント
- 営業日数の上限:年間180日まで
- 都道府県・自治体への届出が必須
- 苦情対応窓口の設置義務
これにより、“グレーゾーン”だった民泊が制度の枠内に入ることになったものの、一方で個人ホストが撤退し、大手プラットフォーマーだけが生き残る構図になったとの指摘もあります。
● 地域との摩擦と“防音・治安”への懸念
- 深夜の騒音
- ゴミ出しマナー違反
- 見知らぬ人の出入りによる防犯不安
こうした問題が、集合住宅での民泊運用に対する住民の反発を生んでいます。
● 地方自治体による上乗せ規制も
自治体によっては、さらに厳しいルールを設けている例もあります。
例:京都市では、住居専用地域での民泊営業を禁止。台東区では、特定エリアの営業日数を制限。
→ 民泊は、法律で許可されても「地域との合意」がなければ成立しない宿泊形態になっています。
🧭 まとめ:感情より構造へ、所有より共存へ
タワーマンションをめぐる「外国人投資家」の話題は、確かに私たちの暮らしに変化をもたらしています。
けれども、「誰が買ったか」だけでは問題の本質は見えません。
今回取り上げた3つの制度——
- 空き家対策税(空室課税)
- 相続登記の義務化
- 民泊規制と住環境保全
はいずれも、「持っているだけの不動産」や「制度の隙間にある利用」に対して、社会としてどう対応すべきかという問いに向き合うものでした。
🔹 所有≠責任な時代は終わる
これまでは「資産としての不動産」が尊重されすぎて、「使われていなくてもOK」という空気がありました。
でも今は違います。
- 使わないなら税がかかる
- 引き継いだなら名義を登記する
- 貸すならルールを守る
というように、「所有=責任」という原則が、現実の制度に落とし込まれ始めているのです。
🔹 外国人だから、ではなく「どう使うか」で見る
感情的な議論では、「外国人が買ってる」「買い占められている」といった言葉が先行しがちですが、
実態を見ると、問題の多くは「投資目的の放置」や「ルールを理解しない利用」によって生じています。
そしてそれは、日本人でも同じことが起こり得ます。
だからこそ、制度や規則を整備し、“誰が”より“どう使うか”で判断する社会へと向かっていくことが重要です。
🔹 私たちにできること
- 感情に流されず、制度と現象を結びつけて考える
- 生活者として、自分の住む地域の議論や政策に関心を持つ
- 情報の出どころを確かめ、噂ではなく根拠ある知識を持つ
それが、不安に飲み込まれないための小さな手がかりになるはずです。
