流行の背景と、いま静かに広がるリスク
SNSで大流行中!フィギュア風加工とは?
ここ最近、SNSで話題になっている「フィギュア風加工」ブーム。
一枚の写真をアップロードするだけで、まるでアニメやゲームのフィギュアのような立体感・ツヤ感・背景ボケを再現した画像に変換できるというサービスが、InstagramやX(旧Twitter)を中心に人気を集めています。
- 使い方はシンプルで、写真をアップロードするだけ。
- 人物の顔や体のバランス、光の入り方を自動的に調整。
- 背景にエフェクトを追加して“商品化されたような”立体感が出る。
この手軽さと映え感が受け、「推しキャラをフィギュア化してみた」「自分の子どもをフィギュア風にした」など、楽しみ方も多様化。
しかし――この“楽しい遊び”の裏側には、見逃せないトラブルの種が潜んでいます。
「勝手に加工された」「なんか不快」という声も
すでにSNS上では、
- 「自分の写真を勝手に使われてたんだけど……」
- 「加工されることで、逆に体のパーツが強調されていて気持ち悪い」
- 「許可してないのに公開されてた」
といった“軽い不快感”や“怒りの一歩手前”のような声が増えてきています。
グラビアアイドルやモデルなど、“顔や身体が商品価値になる人たち”にとっては、勝手にフィギュア加工されることが、職業的な価値の毀損と受け取られることもあるのです。
専門家が警告する3つの法的リスク
2025年9月に報道された弁護士ドットコムのインタビューでは、知的財産権の専門家が以下の3点を明確に警告しています:
1. 著作権侵害の可能性(翻案権)
- 写真やイラストは「著作物」として保護される。
- AI加工は“元の写真をもとに別表現へ変形”するため、「翻案」と見なされやすい。
- 著作権者(=撮影者や制作者)の許可なしに行えば、著作権侵害。
2. 肖像権の侵害
- 被写体の顔が明確に写っている場合、その人の人格権(肖像権)を侵害する可能性。
- 「勝手に公開」「勝手に加工」の両方がアウト。
3. 名誉毀損やパブリシティ権の問題
- 加工により容姿が誇張されることで、本人の社会的評価を損なう表現になることも。
- タレントや著名人の場合、本人の「顔」や「キャラ」は商品価値を持つため、無断利用で損害賠償請求されるケースも想定される。
「自分だけで楽しむ」はセーフ? → 公開するとアウト
よくある誤解として、「自分のスマホ内だけで保存してるならOKでしょ」という声があります。
これは原則として正解です。
著作権法では、「私的使用のための複製」は合法とされています。
つまり、「自分で加工して、自分だけが楽しむ」範囲なら問題は起こりません。
しかし、その画像をSNSに投稿した瞬間に、「私的使用」→「公衆送信」扱いとなり、違法になる可能性があるのです。
なぜ今、まだ炎上していないのか?
今のところ、「訴訟が起きた」「大規模な炎上になった」という話は表に出てきていません。
理由としては:
- 加工対象が主に「自分」や「推しキャラ」であることが多く、被害者意識が生まれにくい。
- 被写体が特定されにくい(フィルターがかかっているため)場合も多い。
- 著作権や肖像権について、まだ多くの人が“無意識”である段階。
しかし、こうしたケースは過去にもたびたび「最初は見逃されていたが、ある時急に炎上する」というパターンで表面化してきました。
実際に起こりうる“未来のトラブル”とは?
ここでは、もしこのままブームが進行した場合に想定されるトラブルの例を具体的に挙げてみます。
🔥 ケース1:芸能人の写真を加工し、バズって拡散
「憧れのタレントをフィギュア化してみた!」という無邪気な投稿が思わぬバズを生み、
それを見た事務所が「無断加工+公開での商用的利用」として警告。
- ➤ 肖像権・パブリシティ権の侵害
- ➤ 加工ツールが商用利用不可だった場合、利用規約違反
結果として、画像削除だけでは済まず、アカウント凍結や損害請求の対象になる可能性も。
🔥 ケース2:友人や家族を勝手に加工し、相手が不快感
「友達の写真をフィギュア風にしてみたら可愛すぎて草」と冗談半分で投稿 →
被写体本人から「勝手に加工して晒すな」と激怒され、関係が悪化。
- ➤ 個人間の信頼トラブル
- ➤ 加工内容次第では名誉毀損の一種とみなされることも
「冗談だった」では済まされず、“いじめ”や“侮辱”と捉えられるリスクがある。
🔥 ケース3:AI加工後の画像がサービス提供者に保持される問題
加工アプリの利用規約をよく読むと、「アップロードされた画像の使用・再配布権を無制限に保有する」条項がある場合も。
- ➤ あなたの顔写真が無断で広告・訓練データなどに使われる可能性
- ➤ 加工後画像がAIモデルの学習素材として保持され続ける
この問題は2024〜2025年にかけてAIプラットフォーム全体で急速に注目された論点でもあり、法整備が追いついていない状況です。
ユーザー側ができる「最低限の自衛策」
では、私たちがこのフィギュア風加工ブームに巻き込まれないためには、どんな工夫や注意が必要なのでしょうか。
✅ 加工対象は「自分」「明確に許可を取った人」だけに
- 他人の写真や、芸能人の画像、キャラクター画像は原則NG。
- たとえLINEやSNSで送ってもらった画像でも、「加工していい?」と一言確認が必要。
✅ 投稿時には“出典”や“自作”などの明記を
- 「自撮りです」「許可済み」など、安心させる文言を入れる。
- 二次創作であれば「非公式」「ファンアートです」と表明し、商用利用しない。
✅ 使用する加工アプリの利用規約を確認
- 「アップロード画像は保持されますか?」「商用利用できますか?」などを必ずチェック。
- 利用前に【サービス名+利用規約】で検索し、危ない事例がないか調べておく。
サービス提供側に求められること
現在、多くのフィギュア風加工ツールは、海外ベース・AI特化型のスタートアップが開発しています。
こうした企業に求められるのは:
- 利用者がアップロード時に“公開の可否”を選べるようにする
- 利用規約をよりシンプルで明確に(誰にどんな権利が渡るのか)
- 加工後の画像がどこに保存され、いつ削除されるのかを明記
国によっては規制が進んでいますが、日本ではまだ利用者が自分で気をつけるしかないのが実情です。
まとめ:便利さと危うさは常に隣り合わせ
「フィギュア風加工」は、確かに楽しくて、SNS映えもする魅力的なサービスです。
でも、その手軽さの裏側には、他者の権利・感情・信用といった繊細なラインが存在します。
- “ただの遊び”が、誰かにとっては“勝手にされた侮辱”かもしれない。
- “流行に乗っただけ”が、あとで“訴訟リスク”に変わるかもしれない。
- “バズりたい”気持ちが、見えない誰かの怒りに火をつけてしまうかもしれない。
SNS時代のクリエイティブには、楽しさだけでなく、思いやりとリスク管理のセンスが求められています。
