▷この記事で伝えること
- 「絶対BLになる世界」って何?なぜ話題?
- 実写化・スピンオフ・海外人気まで!展開の裏側
- “なぜ非現実のはずが共感されるのか”を心理と文化から考察
はじめに:その世界は、恋愛フラグだらけだった。
もし、自分が住む世界が「BL漫画の世界」だったら――
気づいてしまったら、あなたはどうする?
本作『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』は、まさにその問いから始まる。
ごく普通の男子大学生(通称:モブくん)がある日突然、「ここってBLの世界じゃね?」と気づいてしまい、そこから必死に“BL展開”を回避していくという、異色のメタフィクションギャグである。
この作品がここ数年、静かに、しかし確実に熱狂的ファンを増やし続けている。
しかも日本だけじゃない。
英訳版の出版、3期にわたる実写ドラマ化、そして2025年にはついに地上波ファイナル放送――「絶対BLになる世界」は、ただのネタにとどまらないカルチャーになりつつある。
1. 絶対BLになる世界って、どんな話?
まずはざっくりと内容紹介から。
■ 世界設定:ここは“BL世界”である
- イケメンの密着 → 恋愛フラグ
- 体育倉庫での二人きり → 強制イベント
- 鈍感系×ツンデレ、義兄弟、学園の王子様…
→ **「あ、これ絶対BL展開くるやつじゃん」**の連続。
主人公(あえて“モブ”として描かれる)が、こうした“フラグ”を読み解き、全力で回避するのが本作の基本構造である。
■ 主人公の特徴
- 平凡で特徴のない顔(作中でも「顔面偏差値の圏外」と言われる)
- 客観的に世界を分析するメタ認知力の高さ
- 弟がガチのBLカップル(しかも幸せ)
そんな彼が、BL展開に巻き込まれないように日々「感情移入しない」「イベントには近づかない」などの工夫を凝らして生きる。
でも、なぜか周囲の“BL空間”はどんどん濃くなっていく…。
2. 人気の背景:ギャグと愛とメタ構造
この作品が注目された最大の理由は、**“BLギャグなのに愛がある”**という点だ。
● BLへの敬意とツッコミの絶妙バランス
- BLあるあるをいじるのではなく、「あ〜こういうの、BLでしか起きないよねw」という形で、“理解者”としてのツッコミが入る。
- 作者・紺吉さんのインタビューでも、「BLを茶化してるのではなく、愛と視点を込めて描いてる」と明言されている。
● ギャグがメタで深い
- 「俺は脇役。だから恋愛フラグには乗らない」
→ 読者がしばしば感情移入する“空気キャラ”が、物語の中心に据えられるという逆転構造。 - 「“普通の自分”を守ろうとすればするほど物語が動く」
→ この矛盾が爆発的に面白い。
● 実写ドラマ版も評価高し
- 実写化第1期(2021年)~第3期(2024年)まで継続、そして2025年にはファイナルが放送決定。
- 主演の犬飼貴丈が主題歌も担当し、作品愛に満ちた展開が好評を博している。
3. 考察:なぜ「絶対BLになる世界」が“刺さる”のか?
本作の魅力を支えているのは、単なるBLネタの面白さではない。
もっと深いレベルで、「自分には関係ないと思っていた物語」に、なぜか共感してしまう構造がある。
◆ 非当事者の“疑似当事者化”が生む共感
『絶対BLになる世界』の主人公は、「自分はこの世界の主役じゃない」と自認する“モブ”キャラ。
でも、そんな彼が“恋愛漫画的な力学”に巻き込まれていくことで、**読者自身も「物語に対する当事者感覚」**を持ち始める。
→ たとえば、
- 「自分には関係ないはずの“恋バナ”に巻き込まれる戸惑い」
- 「世界が都合よく動いてるように見えるのに、自分だけ違うと感じる距離感」
これは、青春や恋愛に苦手意識があった人ほど、「あれ、自分もそうだったかも」と引っかかる感覚だ。
◆ 面白さの裏にある“構造のズレ”
「なぜこの作品は面白いのか?」を構造的に見ると、以下のズレが見えてくる。
| 見せかけ | 実際のズレ |
|---|---|
| BLの世界 | 主人公はノンケ/モブ |
| 恋愛のフラグ | 主人公は逆にフラグを回避しようとする |
| 主人公になりたい | 主人公は“モブのままでいたい” |
| トキメキ展開 | ギャグと冷静な観察で逆走する |
このズレが“笑い”を生み出しつつ、「自分だったらどうする?」という感情を引き起こす。
だから読者は、“非現実な世界”にもかかわらず、共感してしまうのだ。
◆ 心理学的視点から見るフィクションの魅力
心理学者 Keith Oatley 氏は、フィクションは“社会的シミュレーター”であると述べている。
つまり、
- 物語を読むことで、自分が経験していない人間関係や状況を、安全な仮想空間で追体験できる。
- 特に『絶対BLになる世界』のような「メタ的で非日常的」な設定は、より強く注意を引き、共感や学習を促す。
さらに2022年の研究(Dubourgら)では、物語に含まれる“面白さ”=進化的に最適化された注意喚起の装置だとされている。
→ 「非現実だからこそ、面白くて学べる」
→ 「ギャグやBLが“装置”となって、人間の感情や構造理解に迫ってくる」
そう考えると、『絶対BLになる世界』は単なるジャンルネタを超えた、「進化型の感情シミュレーター」とも言えるかもしれない。
4. まとめ:僕らはなぜ“BL世界”に惹かれてしまうのか?
『絶対BLになる世界』は、突飛な設定と笑いの中に、“誰しもが持つ違和感”や“なりきれなさ”を丁寧にすくい上げてくれる。
- 自分は主役になれないかもしれない。
- 自分には恋愛なんて向いてないかもしれない。
- でも、それでも、物語に巻き込まれる日がくるかもしれない――
そんなふうに、自分ごととして世界を捉え直す体験が、この作品にはある。
BLだとか、ジャンルだとか、そういうことを一度忘れて。
「物語って、誰のためにあるんだろう?」と考えたとき、
その隙間からこぼれてくるのが、この“絶対BLになる世界”の、ちょっと不思議で、温かい魅力なのだ。
🎯まとめ
- 『絶対BLになる世界』は、BL世界を“回避”する主人公によるメタギャグ漫画
- ギャグの中に、読者自身の“主役じゃない”感覚をすくい上げる構造あり
- 心理学的にも「フィクション=共感訓練」として効果があり、非現実の物語が“自分ごと”に変わるメカニズムがある
- 非日常だからこそ、現実の自分を見つめ直せる “笑って泣けるメタエンタメ” である
