▷この記事で伝えること
- 「レンタル怖い人」とは何か、どういう仕組みか
- 実際に利用されるシーンと具体的な体験例
- 類似サービスとの比較と倫理・法的な問題点
- なぜこのようなサービスが生まれ、求められるのか
第1章:「怖い人」をレンタルする時代が来た?
「レンタルおじさん」や「レンタル彼女」はすでに市民権を得つつあるが、その進化形とも言えるのが「レンタル怖い人」だ。
名前だけ聞くと、半グレのような人物を貸し出す危ないサービスかと思われがちだが、実態はやや異なる。
運営者はあくまでも「あなたの知人として付き添うだけ」と強調する。法律すれすれのところに踏み込むのではなく、**“圧”を持つ存在がいることで、交渉の場での安心感や立場の補強になる”**という仕組みである。
公式サイトでは、「探偵や弁護士より手軽に頼める」とし、相談は無料、依頼料は30分あたり2万円が目安。Instagramアカウントでは「金銭トラブル、DV、近隣トラブル、不倫の修羅場」などに派遣された例が紹介されている。
第2章:どんな場面で使われているのか?リアルな体験談
● 不倫相手への“同席”
依頼者が浮気された側で、相手と話し合いをする際に「怖い人」を同席させ、毅然とした雰囲気を演出した。直接的に怒鳴ったり威嚇したりすることはなく、ただ黙って見守っているだけで、相手の態度が変わったという。
→ これは「当事者が一人では不安」「相手が高圧的なので冷静に交渉できない」といったニーズに対応する例。
● 退去時の立ち会い
退去時にオーナーと揉めていた依頼者が、立ち会い時に「知人」としてレンタル怖い人を同行。オーナー側が今までとは別人のように丁寧な対応になり、無事に鍵を返却して解決したとされる。
→ 金銭や住居をめぐる場面では、第三者がいるだけで抑止力になる。
● 給料未払いに対して
あるバイト先で給料が支払われなかった若者が、社長に支払いを要求する場面にて依頼。事前に「怖い人を連れていきます」と宣言したところ、当日になって社長が全額を用意していたという。
→ 交渉力の弱い立場を補強する“予告型の抑止”にもなっている。
第3章:法律・倫理的には問題ないのか?
結論から言えば、法的には非常にグレーな領域だ。
「レンタル怖い人」は明確な暴力や脅迫行為を行わない。あくまで“知人”として“同席”しているだけなので、形式上は問題がないように見える。
しかし、法律家の間では以下のような懸念も出ている:
- 相手が精神的威圧を感じた場合、強要罪や脅迫罪に発展する可能性がある(構成要件としては“恐怖心の有無”が重視されるため)。
- 業務妨害や恐喝まがいの行為に発展した場合、依頼者ごと処罰対象になりうる。
- “演出された圧力”が意図的に使われたと認定されると、民事訴訟などで不利になる可能性がある。
また、暴力団排除条例との関係も無視できない。本人たちは「反社ではない」と明言しているが、外見や態度によっては“疑似的な反社的印象”を与えることもある。
第4章:似たようなサービスも実はたくさんある
この「レンタル怖い人」だけが特別な存在かというと、そうではない。
実は他にも、関係性をレンタルするサービスは数多く存在しており、いずれも“人間関係の代替”という構造を持っている。
● レンタル彼女(Girlfriend Rental)
恋人役を演じてくれるが、実際は感情的な支えや自尊心の補強が目的。
海外の関係専門家Samantha Jayne氏は「一時的な癒しにはなるが、根本的な孤独を埋めるものではない」と分析(New York Post)。
● レンタル家族(Family Romanceなど)
結婚式に親を演じて参加する、SNSで幸せな家族風景を演出するなど。
米「ニューヨーカー」誌は「家族の代替が必要な社会構造のひずみを映し出すサービス」と評している(New Yorker)。
第5章:考察──なぜ人は“怖い存在”を借りたくなるのか?
ここからは、この記事の3割を占める考察パートに入る。
本質は、単なる交渉の補助ではなく、**“失われた信頼感や自尊心を補う構造”**にあると考えられる。
● 自分一人では怖くて動けないという心理
たとえば、DVや金銭トラブルの場面では、「本当はやり返したい」「主張したい」が、怖くて言えない、動けない──という葛藤がある。
そこに“味方のフリをする怖い人”がつくことで、勇気が湧く。その心理的補助輪としての価値は大きい。
● 「第三者が見ている」という安心
もう一つは“監視”ではなく“保証人”的な機能。
「もし相手が何かしたら、こっちにも証人がいるぞ」という立場補強の意味がある。これは実際の交渉では非常に大きな差を生む。
● 弁護士や警察が遠すぎる現実
警察に相談しても民事不介入、弁護士は費用と手間がかかる。
その“間”を埋める選択肢として、**「心理的コストの低いプロフェッショナル風存在」**が求められているのかもしれない。
第6章:実際の料金と契約はどうなっているのか?
「レンタル怖い人」はあくまで個人運営ベースのサービスで、弁護士や公的サービスとは異なり、契約書や保証があるわけではない。
ただし、公式サイトでは以下のような基本方針が掲げられている:
- 初回相談:無料(LINEやメールなどで対応)
- 出張同行:30分 2万円〜(延長は15分単位で追加料金)
- 交通費・宿泊が必要な場合は別途実費精算
また、利用者には免責同意や利用規約に対する同意が求められ、「違法行為を目的とした依頼は一切受けない」と明記されている。
ただし、実際には口頭契約のみで成立するケースも多く、金銭面・トラブル時のリスクは依頼者が背負う構造になっている。
第7章:実際に起きたトラブル例
以下はSNSや掲示板などで報告された「レンタル怖い人」にまつわるトラブル事例である。
※補足:ここで紹介している内容は、SNSや掲示板などに投稿された体験談をもとにしています。中には誤解や誇張が含まれている可能性もあり、すべてが事実とは限りません。あくまで参考情報としてご理解ください
● 相手が急に逆ギレ、通報されかけた
依頼主と一緒に訪れた現場で、相手が激高して「脅された!」と通報。怖い人側は何もしていなかったが、警察が現場に来る騒動になった。
→ “ただ居ただけ”でも、相手の受け取り方で問題になることがある。
● 詐欺まがいの偽サービスに当たった
Twitterでは「似たようなサービスを見つけて連絡したら、前金を要求されたうえに音信不通になった」という報告も。正式な業者名を調べずに依頼した結果とみられる。
→ 本物そっくりの“模倣詐欺”も存在している。
● 効果がなかった/逆に煽られた
交渉相手が「その人、誰?雇ったの?」と煽ってきて、逆に関係が悪化したというケースもある。事前の見せ方や戦略の失敗で、結果が裏目に出た例だ。
第8章:法改正や規制の対象になる可能性は?
現状、明確な法規制は存在しないが、以下のような方向性が懸念されている:
- 特定商取引法の適用:契約内容が不透明な場合、説明義務や返金対応を求められる可能性あり。
- 暴力団排除条例との接触:外見や態度、行動内容が「反社会的行為」と誤認されるリスク。
- 準委任契約とみなされる余地:責任や損害賠償範囲が問われるケースも想定される。
とくに“第三者に心理的影響を与える目的で同行させた”場合、法律用語でいう「未必の故意」に該当する恐れがあるとの専門家意見もある。
第9章:SNS時代の“見せかけの安心”とレンタル文化
「レンタル怖い人」のようなサービスが注目される背景には、“自分ひとりでは立ち向かえない”という社会的孤立感と、**“交渉や証拠を外から可視化することの重要性”**がある。
SNSでは「レンタルで味方を作った」「怖い人に見守られて安心した」といった投稿がバズることもある。
しかしそれは、**“怖さ”というより“信頼の演出”**に近い。
信頼を買う社会──それは怖い話ではなく、どこか哀しい現実でもある。
第10章:考察
ここでは、記事全体の締めくくりとして、さらに深く3つの視点から分析する。
■ ① これは“新しい仲裁文化”かもしれない
昔の日本には、地域の「おっちゃん」や「町内会長」が揉め事を仲裁してくれた時代があった。
それが都市化や人間関係の希薄化によって消えてしまい、「誰かに代わりに来てほしい」という需要がプロ化したとも言える。
「レンタル怖い人」は、その空白を埋める**新たな“町の代理人”**という見方もできるのではないか。
■ ② 恐怖ではなく、“安心の演出”が本質
ネーミングは「怖い人」だが、実際の目的は「頼れる味方の演出」である。
これは心理的に“後ろ盾”を感じさせる行為で、暴力とは違う。
→ たとえば「背広を着た同席者」や「警備員の存在」も、威圧ではなく“安心”を生む装置になりうる。
つまり本質は、“相手より強く見せる”ことではなく、“自分が安全と感じられる状況を作る”ことなのだ。
■ ③ 境界の曖昧さが課題──自己責任であることを忘れずに
このサービスを「利用する自由」はあるが、「法的責任も自分で負う」覚悟が必要である。
法律のグレーゾーンに踏み込むには、それなりのリスクを理解し、相手との関係性や場面ごとの判断力が求められる。
そして何より、“人を借りて解決する”という選択肢の前に、自分自身がどう交渉するか、何を守りたいかを考えることが、もっとも大切だ。
🎯まとめ:怖いのは「人」じゃなく、頼る先がない社会かもしれない
レンタル怖い人は、現代社会の弱点に入り込むニッチなサービスだ。
暴力的でもなく、詐欺でもない。ただ、誰かの“心細さ”に寄り添っている。
それを「悪」と切り捨てるのは簡単だが、むしろこのサービスが存在してしまう背景にこそ、現代の問題があるのかもしれない。
🔗 参考・出典:
