がっしりとした体と咆哮が守る──モンゴルの犬と草原の動物たち

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▷この記事で伝えること

  • モンゴルの遊牧文化と深く関わる「バンクハル犬」の復活と意義
  • 日本では知られていない“変わった動物”たちとその生態
  • 飼い主や研究者が語る感情的な体験談
  • モンゴルという土地に根差した「動物観」の背景
  • 保護活動や制度の現状と、その裏にある葛藤と変化

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1. 広大な草原とともに生きる:モンゴルの動物たち

モンゴルといえば、どこまでも続く草原とゲル(移動式住居)を思い浮かべる人も多いでしょう。そんな自然豊かなモンゴルには、日本では見られない特異な動物が存在し、その多くが人間の暮らしと密接に関わっています。

とりわけ注目されるのが「バンクハル犬(Bankhar Dog)」です。狼のような外見を持ちつつも、非常に忠実で賢く、古くから遊牧民にとって家畜を守る“相棒”として活躍してきました。

🐕 バンクハル犬の特徴(体格・性質・習性)

特徴内容
体格体重45〜60kg、肩高60〜80cmほどの大型犬。がっしりとした骨格と厚い被毛を持つ。見た目はチベタン・マスティフに近いが、より運動能力に優れる。
被毛極寒の草原にも耐えられる二重被毛。寒冷地仕様で、−40℃でも活動可能。夏は自然に毛が抜けて調整される。
声・鳴き声太く低い咆哮のような鳴き声。狼を威嚇するため、夜間に遠くまで響き渡るようになっている。
性格・気質家族には非常に忠実で優しいが、外部者や野生動物には警戒心が強く、攻撃的な一面も。非常に賢く、自律的な判断ができる“自己判断型”のガーディアン。
習性ゲル(住居)の周囲を周回パトロールする、群れのリーダー的行動を取る、放牧地の境界を守るなど、無指示で“仕事”をする本能が強い。昼は寝て体力を温存し、夜間に最も活動的になる。

🌀補足:バンクハルはモンゴル語で「守る者」「強い者」を意味するとされ、犬種として登録されていなかった時代から“土地と家畜を守る魂”として認識されてきました。


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2. 【体験談】「王様のような犬が撃たれた日」—感情を揺さぶる喪失の記録

米国のNPO「Mongolian Bankhar Dog Project」では、保護活動の過程で出会ったある犬との別れを記録しています。

その犬、名を「バーウグアイ(Baavgai)」といい、甘えん坊で優しく、腹を見せて撫でられるのが好きな大型犬でした。ある日、野犬と間違われ、駆除隊に射殺されてしまいます。現場に立ち会った関係者は深く動揺し、「まるで小さな犬の王様がいなくなった」と涙ながらに語ったといいます。

遺体は遊牧民の伝統に従って、太陽の当たる山の南斜面に埋葬されました。尾を切って頭の下に埋め、魂の帰還を祈る。この一連の儀礼は、単なるペット以上の存在として犬と接するモンゴル文化を象徴しています。


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3. 野生と共存する動物たち:バイカルアザラシ、ゴビグマ、サイガも

モンゴルには犬だけでなく、他にも「見たことのない」ような動物がいます。

■ バイカルアザラシ(モンゴル北部に隣接)

ロシアのバイカル湖に生息する淡水性のアザラシ。氷上で出産し、子どもは白くて丸く、まるで「雪玉の妖精」。モンゴル北端の人々とも交流があり、文化的にも神聖視される存在です。

■ ゴビグマ(Gobi Bear)

世界でもっとも数が少ない野生グマで、個体数は40頭未満。砂漠に棲む唯一のクマで、果敢にサボテンを掘って水を得るなど、極限環境に適応しています。

■ サイガ(Saiga)

特徴的な“象のような鼻”を持つ草食獣。もともとはユーラシア全体にいたが、密猟や病気で激減。現在は一部がモンゴルに残っており、保護が進められています。


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4. 【現地発信】野良犬問題と市民の葛藤:「撃たれるなら連れて帰って」

一方、都市部では異なる現実もあります。モンゴルの首都ウランバートルでは、野良犬・猫の問題が深刻化。2023年には「年間20〜30万頭が殺処分されている」と報道されました。

市民の証言によると、「散歩中の愛犬が突然駆除隊に撃たれた」「誰にも相談できず、土に埋めるしかなかった」といった衝撃的な体験が後を絶ちません。

野良犬対策として、2024年には動物遺体の廃棄ルールを厳格化する法律が成立。しかし、地域によっては埋め立て地が存在せず、いまだに放置されるケースも多く残っています。


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5. 考察:「動物を守る」とは誰の視点か

ここまで紹介してきた話題から見えてくるのは、「守られる動物」と「脅威とみなされる動物」の境界が非常に曖昧だということです。

たとえば、家畜を守るために導入されるバンクハル犬は英雄のように語られますが、同じ“犬”でも都市部では脅威として処分対象になる。個体数の少ない希少種(ゴビグマなど)は保護される一方で、環境に適応した“普通”の動物たちは人間の都合で管理されているのが現実です。

モンゴルという土地は、野性と人間社会の境界が近く、その中で動物たちは絶えず「役割」を求められているのかもしれません。

→ 例えるなら、広大な草原に描かれた絵巻物。その中で「守護獣」「害獣」「神聖」「汚染源」といった“ラベル”が上から貼られていく。そうした分類が本当に動物たちの「生き方」に即しているのか、私たちは問い直す必要があるでしょう。

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6. モンゴルの犬が「再発明」される理由

バンクハル犬が再注目されたのには理由があります。ただ単に「珍しいから」ではなく、捕食と保護のバランスを、暴力に頼らず保つ存在として再発見されたからです。

近年、アメリカやカナダでは「生物多様性と共存」を重視する動きが加速しています。狼やヒョウを殺さず、家畜を守るにはどうするか──。この問いに対し、バンクハル犬の存在が「平和的で効果的な答え」として浮かび上がりました。

■ 実際の効果:80〜100%の捕食被害削減

科学的研究でも、バンクハル犬を導入した牧場では、狼や雪豹による家畜被害が激減したとされています。しかも、犬が攻撃するのではなく、「存在するだけ」で野生動物が近づかないというのが大きなポイントです。

つまり、犬は境界で“交渉”しているのです。


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7. 遊牧民の視点:「犬は家族であり、土地の守り手」

遊牧民にとって、犬は“道具”ではありません。ある牧夫は次のように語ります。

「この犬は、私の父の時代からいる。家族と同じように、共に育ち、旅をし、守ってくれる。」

犬はゲル(住居)の周囲を歩き、夜は狼の遠吠えに応じて咆哮し、朝になると子どもに顔をなめて起こす。まさに「共に暮らす存在」です。

その一方で、犬が死ぬと尾を切り、頭の下に埋めて魂の還る道をつくるなど、精神的な別れの儀式が今も続いています。この文化的な重みこそ、バンクハル犬が単なる“再導入”ではなく、「精神性の再接続」でもある理由です。


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8. 変わった動物は、変わった人間によって守られる?

奇妙な鼻をもつサイガ、砂漠に住むゴビグマ、家畜の守り神・バンクハル犬。これらの「変わった」動物たちは、ある種の“個性”や“物語性”によって守られてきました。

しかし、保護の予算も支援も、注目度に比例する現実があります。あまりに“普通の動物”は、むしろ放置され、見落とされがちです。

つまり──

「変わっている」ことが、生き残るための“パスポート”になってしまっているのです。

それは動物にとって幸せなことなのでしょうか。それとも、また別の“役割”を背負わされているだけなのでしょうか。


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9. 【考察】私たちが動物に貼るラベルとは何か

モンゴルの犬や動物たちは、私たちにこう問いかけます。

  • 犬は「守護者」か「害獣」か?
  • ゴビのクマは「絶滅危惧種」か「保護する価値のある何か」か?
  • 都市の野良犬は「危険」なのか「見捨てられた家族」なのか?

その答えは、環境によって、文化によって、立場によって全く異なります。

モンゴルの広大な土地は、それぞれの命が独自の物語を生きていることを思い出させてくれます。そして、動物たちに対する私たちの目線――つまり「役に立つか」「かわいいか」「珍しいか」といった評価軸が、いかに狭く、時に残酷かも教えてくれます。


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🎯まとめ:変わったのは犬か、それとも私たちか?

モンゴルの変わった犬や動物たちは、「ただ変わっているから」注目されているのではありません。
彼らは、人間の文化や視点の“変化”を映し出す鏡でもあります。

バンクハル犬は、文化を受け継ぎながら、現代的な意味を獲得した存在。
ゴビグマやサイガは、人間が生き物にどのような価値を見出すかというフィルターを可視化します。
都市の野良犬たちは、その裏で失われつつある「命へのまなざし」を静かに問いかけています。

つまり、「変わったモンゴルの動物たち」は、人間の都合によって変わった“意味”を背負わされている存在なのかもしれません。


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🔗 参考・出典

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