なぜ金は騒がれない?|高騰してもメディアが煽らない静かな理由

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金はなぜ「煽られない」のか?

SNSでもメディアでも静かすぎる「金高騰」の不思議

金価格が史上最高値を更新し続けている。国内では1gあたり2万円超、国際相場では1oz=4,000ドルに迫る勢い。これほどの値上がりなら、かつての仮想通貨ブームのような騒ぎが起きても不思議ではない。
だが現実には、SNS上の反応は静かで、メディアも冷静。むしろ「既に買っていた人だけが静かに得をしている」ような空気感が漂っている。

この「静かな高騰」はなぜ起きているのか?そこには、金という商品の特異な構造と、情報流通・広告収益モデルの背景が大きく関わっている。


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感情の噴出はある、でも「局所的」

SNSで観測された感情は“後悔”と“嫉妬”が主役

2025年10月、田中貴金属工業が金の店頭販売価格を1g=20,018円と発表した。これを受け、X(旧Twitter)上では「え、もう2万円!?」「10年前に買っとけば…」といった投稿が多数。
感情の内訳を分析すると、「驚き・衝撃」が35%、「後悔・反省」が20%、「羨望・嫉妬」が15%という構成(※Sankei Emogram調査)。

これは明確に感情的な反応だが、“祭り”ではない。どちらかというと、「すでに上がってしまった」「もう買えない」という諦めや距離感が目立ち、「今から乗ろう!」という熱気にはなっていない。
たとえば以下のような投稿が象徴的だ。

「金持ちしか勝たん…もう買えんわ」
「社会人になったとき3000円/gだったんだよな〜笑」

この“諦め混じりの自虐”が、金価格高騰という現象を「誰か他人ごと」として処理してしまう空気を作っている。


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メディアが煽らない構造的な理由

広告主がつかない商品はメディアの主役になれない

最大の理由は、「金」という商品の性質が“広告と相性が悪い”ことにある。
株や仮想通貨と異なり、金は長期保有向けで、売買の頻度が低い。しかも取り扱い企業が限られており、大規模キャンペーンを張る業者も少ない。

これにより、メディアにとっては以下のような構造が生まれる。

  • クリックは稼げても、収益化しづらい
     → 金のニュースはPVが出やすいが、広告主が少ないために単価が伸びにくい。
  • 取り上げても収益にならない
     → 一般証券・投資信託系の広告枠にとって、金は“取扱対象外”の商品であることも多い。
  • “煽る”と信用を落としかねない
     → 特に金販売は手数料やプレミアム(上乗せ価格)が大きく、「投資家に不利な商品」として批判されやすい(Forbesなど複数の媒体が警告)。

広告と報道の距離感は微妙だが、実際には「広告主がつきやすいテーマ」が取り上げられやすい傾向は確かに存在する。
2024年のJerusalem Postの記事では、「金は39回以上史上高値を更新しているが、メディア露出は減っている」と指摘されていた。

つまり、「金は盛り上げても儲からない」→「取り上げられない」→「感情が拡散しない」という静かなスパイラルができあがっている。


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バブルと違う、“静かな勝者”だけが得する構造

仮想通貨と比較して見える金特有の“煽られなさ”

ビットコインやAI関連株のように、新規参入を巻き込んで盛り上がる資産は、「煽ることで市場が膨らむ」性質を持つ。
ところが金は、価格が上がっても基本的に「持っている人が勝ち」「後から入っても旨味が薄い」。

この構造が、「FOMO(Fear of Missing Out/買い逃し恐怖)」すら生まれにくくしている。
たとえば米国では、株も金も同時に高騰する異例の相関が起きているにもかかわらず、市場参加者はむしろ警戒的だ。

「金も株も上がるなんて逆相関が壊れている。いつ崩れるんだ…」
「安全資産とはいえ、もうバブルじゃないのか」

このような声が市場心理を抑制しており、過熱感は意外と乏しい。
実際、過去には金が6%以上下落した場面もあり、ホルダーの間にも「逃げ時」の空気がある。

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なぜ「金を今すぐ買え!」が起きないのか

広告煽りが効きにくい“売れない商品の宿命”

金は現物商品であり、購入の敷居が高い。
銀行口座や証券口座を通じて少額から始められるとはいえ、以下のような特徴が「広告向きではない」性質を生んでいる。

  • 短期で利益を出しにくい:数日〜数週間で急騰することが少なく、“買えば儲かる”という幻想を提供しにくい。
  • 売買にコストがかかる:スプレッドや手数料が高く、回転売買に向かない。
  • 派手なストーリーが作れない:「世界を変える技術」や「〇〇ショック後に爆上げ」などのドラマ性が薄い。

そのため、証券・仮想通貨・NFTといった“広告商品化しやすい資産”と比べて、
金は“安心のために持つもの”という消費イメージが強く、「今すぐ参入せよ!」という文脈に乗せづらい。

これは、メディアが金を取り上げにくい構造とも直結する。実際、2024年にForbesが示した見解では、
「金の広告を鵜呑みにしてはいけない。販売者のマージンが大きく、投資リターンの視点では合理的とは言えない」としている。
つまり、広告で煽る側にも“倫理的・法的なブレーキ”が働きやすいという背景がある。


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市場の静けさは「金そのものの本質」かもしれない

煽られず、語られず、それでも評価されていく

こうしてみると、金という資産がいかに“情報の波に巻き込まれにくい存在”であるかが見えてくる。
金は不安定な時代にこそ選ばれる「守りの象徴」であり、
一攫千金を狙う投機家たちのターゲットとは性質が異なる。

むしろ、金の静けさこそがその信頼性を裏打ちしているとすら言える。
大々的なキャンペーンもなく、SNSでの大バズりもなく、
それでも少しずつ価格を伸ばしてきた事実が、じわじわと評価を重ねている。

いまSNSで目立つのは、

  • 「買っておいてよかった」
  • 「前に買えなかった悔しさ」
  • 「これはもう高すぎて無理」
    といった、“静かなエモさ”が中心だ。

金の本質は、熱狂ではなく蓄積。
その意味で、メディアや広告が煽ってこないのは、むしろ資産としての信頼の証明かもしれない。


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「買わない理由」より「煽られない理由」がヒントになる

市場の静けさに潜む次の変化を見極める

最後に強調したいのは、「煽られないこと=興味を持たなくていい」ではないという点だ。
むしろ今後、円の実質価値がさらに低下するリスクや、米中の政治不安が高まれば、
“静かに強い資産”としての金の価値が、より際立ってくる可能性がある。

「誰も煽ってこないけど、なぜかじわじわ上がっている」。
これは投資判断におけるひとつのシグナルかもしれない。
熱狂の裏にはバブルがあり、静けさの裏には真価がある。

金が煽られないのは、広告主の構造や売買特性によるものだけでなく、
“金という資産が語るべきことを語っていない”というメディア構造の反映でもある。

その“語られなさ”にこそ、今の市場が無意識に認めているものがあると見ることもできる。
大声で叫ばれる情報より、静かに放たれた存在感。
その意味を考えることで、金という資産をもう一段階深く理解できるはずだ。

🔗 参考・出典

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