▷この記事で伝えること
- ステーブルコインとは何か、その仕組みと課題
- 実際に起きた暴落や失敗事例の体験談
- 米国・中国・国際機関による規制・警鐘の動き
- 利用者としてのリスクと向き合い方
■ ステーブルコイン=安定した仮想通貨?
「ステーブルコイン(Stablecoin)」とは、**法定通貨などの資産に価格を連動させた暗号資産(仮想通貨)**のことです。
米ドルと1:1で価値を保つよう設計されており、Tether(USDT)やUSD Coin(USDC)が代表格です。
取引所間の送金、DeFi取引、グローバル決済などにおいて「変動しにくい通貨」として利便性が高く、2025年8月時点で世界全体の時価総額は2,500億ドル以上と急成長を遂げています。
しかし、この「安定」の裏には、いくつもの構造的なリスクと過去の崩壊事例が潜んでいます。
■ TerraUSD(UST)の崩壊──全財産を失った投資家たち
2022年に起きたTerraUSD(UST)暴落事件は、ステーブルコインが“安定”とは限らないことを世に知らしめました。
- Raidenさん(当時23歳)は、USTに約2万ドルを投資していました。大学卒業後の資金として蓄えていたもので、「ドル連動型だから安全だろう」と信じていました。
→ しかしUSTは3日で価値がゼロ近くまで崩壊。彼は全財産を失い、実家に戻って生活再建中だといいます。 - Jonahさんは、Stablegainsという企業を通じてUSTに12万ドルを預けていました。企業の表向きは「ドル建て利回り保証型」でしたが、実際はUST1本に投資していたことが後に発覚。
→ 結果、預けていた資金の9割以上を失う事態となり、「10秒ごとに自分の愚かさを思い知る」と語っています。
これらの事例は、「ステーブル」という言葉の信用性に依存した判断が、いかに破壊的になり得るかを物語っています。
■ 法整備は追いついているのか?
● 米国:Genius Actが施行
2025年7月、米国では「Genius Act」が成立し、ステーブルコイン発行者に対して金融機関としての登録義務を課しました。
これにより、規制環境は整備の方向に動き出しましたが、即座に「安全」になるわけではないという点が各所で強調されています。
● 中国:詐欺への警鐘
中国では、投資詐欺にステーブルコインが用いられる事例が増え、業界団体が「違法資金調達リスクに巻き込まれる恐れ」を警告。とくにSNSで拡散されている「高利回り保証型コイン」の実態が不透明で、逮捕者も出ているとされています。
● BIS(国際決済銀行):中央銀行の評価
2024年以降、BISは複数のレポートで「ステーブルコインは通貨として性能不十分」と批判。
- 流動性不足
- 管理主体の不透明性
- 犯罪利用リスク
などがあり、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の方が公共性が高い」と提言しています。
■ 規模が大きくなるほど“安定”は逆説的に危うくなる
ステーブルコインの市場規模は2025年現在、300億ドル/日超の取引が行われるまでに成長しました。
しかし、この急拡大は逆に、「システム全体が脆い構造の上に築かれている」ことを意味します。
インベストペディアの分析によれば、今後10年以内にステーブルコインの大規模取り付け(run)が起きる確率は**30〜35%**とも推定されており、銀行と違って中央による保護がないことがその根本原因です。
■ 考察:「ステーブル」とは何なのか?
私たちは「ステーブル(=安定)」という言葉に、静かで変わらない価値の象徴のような印象を抱きがちです。
しかし実際は、その安定性は**「裏側で誰かが頑張って支えている」**状態で成り立っていることが多いのです。
USTのようなアルゴリズム型ステーブルコインは、ドルのような現物資産を持たず、数式と仕組み(Burn&Mint)で価格を維持していました。
つまり、「信頼」ではなく「設計」に依存していたわけです。
設計の前提が崩れれば、安定は一瞬で崩壊します。
しかも、その判断材料がユーザーに開示されていないことも少なくないのです。
■ 安定性は“透明性”と“信頼性”の上にしか立たない
BISやMcKinseyが指摘する通り、ステーブルコインの安定性を裏付けるためには以下の3要素が必要です。
- リアルタイムの準備資産報告(attestation)
- 発行主体の信頼性とコンプライアンス遵守
- 危機時の流動性支援(バックストップ)
しかし、現状これを全て備えているステーブルコインはほぼ存在していません。
また、利用者がこうした中身をきちんと理解しないまま使っているケースも多く、“知らずに巻き込まれる”構造が生まれやすくなっています。
■ ユーザーとして何を見極めるべきか?
仮想通貨やWeb3に詳しくなくても、以下の点をチェックするだけでリスクを減らすことが可能です。
✅ そのステーブルコインは、どこが発行している?
- 発行主体が金融ライセンスを持っているか
- 登録された監督機関があるか
- ホワイトペーパーや準備資産報告を出しているか
✅ 利回りは“現実的な数字”か?
- 「年利20%保証」などは通常ありえません。米ドルや国債の利回りと比較し、違和感があるなら一度疑ってみましょう。
✅ 出金や償還はいつでもできるか?
- 「○日ロック」「○回制限」などがある場合、急な相場変動時に逃げられなくなる可能性があります。
■ 規制と技術の間で揺れる未来
2025年現在、ステーブルコインは金融界からも注視される存在になっています。
米国は法整備を進め、中国は抑制、欧州はCBDCと並行した規制の統合へと舵を切っています。
一方で、金融庁のような各国規制当局は、「既存法で十分対応できない部分が多すぎる」として、**“ハイブリッドな対応”**を模索中です。
つまり、まだまだ未成熟な“法と技術のせめぎ合い”の段階であり、ユーザーが一人ひとりリスクを見極めて使う時期にあるというのが現実です。
🎯まとめ:ステーブルの正体を見極める「眼」が求められる時代
ステーブルコインは、便利で効率的な金融技術である一方、「安定している」というラベルが一人歩きすることによる誤認と被害が拡大しやすい構造でもあります。
- 「ステーブル」という言葉に惑わされない
- 発行元の信頼性を見極める
- 利回りやプロジェクト内容を理解する
- 万一に備えて分散・損切りラインを考えておく
これらを意識するだけで、「巻き込まれるリスク」は大きく減らせます。
今後、ステーブルコインが社会インフラとして生き残るかどうかは、制度と透明性のアップデートにかかっています。
その過程にいる今だからこそ、冷静な目でその“安定”を見極めていきましょう。
