▷この記事で伝えること
- 釧路市で今何が起きているのか?
- メガソーラー開発の背景と広がり
- 専門家・行政・住民の反応と対立構造
- 現地の生態系に何が起きているのか?
- 後編で:制度の穴と、私たちの未来への問い
■ 釧路湿原に突如浮上した「巨大な太陽光発電計画」
2024年以降、北海道・釧路湿原の南側地域で急速に進んだのが、「メガソーラー」=大規模太陽光発電施設の建設です。
釧路市によると、2012年当時25カ所だった太陽光施設は、2025年には560カ所超にまで激増。この“爆発的建設ラッシュ”に、市民と行政、自然保護団体が揺れています。
■ 「FIT制度」がもたらしたメガソーラーの急拡大
背景には、**固定価格買取制度(FIT)**の存在があります。再生可能エネルギーの普及を目的としたこの制度により、発電した電力を国が一定価格で長期間買い取る仕組みができ、企業が参入しやすくなりました。
しかしこれが逆に、「利益目的の無秩序な開発」へのインセンティブになってしまったという見方もあります。
釧路市議・大澤恵介氏はこう語っています:
「制度そのものにバグがある。北海道の自然や風土に合ったルール設計がないまま、外資や投資目的の企業が一斉に入り込んでしまった。」
■ 環境への懸念:タンチョウ、オジロワシ…貴重な生き物たちへの影響
問題視されているのは、太陽光発電という“クリーンエネルギー”そのものではなく、その設置場所と環境影響です。
釧路湿原は、ラムサール条約にも登録された日本最大の湿地。以下のような生物が棲んでいます:
- 国の天然記念物「タンチョウ」
- 絶滅危惧種「オジロワシ」
- 渡り鳥の中継地としても世界的に重要
メガソーラー建設地のすぐ近くで、これらの鳥の巣が複数確認されているにも関わらず、当初の住民説明会では「巣は存在しない」との説明がなされていました。
この“事実との食い違い”が、住民の強い怒りを引き起こすことになります。
■ 「ノーモアメガソーラー」— 釧路市長が宣言
2025年6月1日、釧路市・鶴間市長は「ノーモアメガソーラー宣言」を表明。市として今後、調和しない太陽光開発を制限する方針を打ち出しました。
この宣言は条例としての拘束力はありませんが、同年9月に提出予定の建設許可制条例案に向けた“政治的メッセージ”でもあります。
「このままでは、私たちの湿原が沈黙する。」
— 市議会における発言より
■ 専門家の意見:文化庁と市教委の連携
釧路市教育委員会は、文化庁に対し、「計画地が天然記念物に与える影響が不明確」として意見照会を実施。
文化庁は2025年に、「調査の実施は適当」との判断を示しました。
これは行政レベルでも危惧が共有されていることを意味し、単なる市民運動ではない広がりを見せています。
■ 住民の実感:説明会で「巣はない」と言われたのに…
釧路湿原南部に隣接する地域では、地元住民への説明会が開催されていました。
ある住民はChange.orgにこう綴っています:
「オジロワシの巣は確認されていない、というのが説明会での事業者の言葉でした。ところが、後に専門家や報道により複数の巣があると発覚。私たちは何を信じればいいのか。」
このような“説明と現実のズレ”が、住民の信頼喪失や不信感の増幅につながっています。
■ 11万筆の署名が物語る「怒りと悲しみ」
自然保護団体や市民有志により、署名サイトChange.orgで立ち上がったキャンペーンは、2025年8月時点で11万筆超を集めています。
キャンペーンの訴え:
- 「湿原の自然は、金のなる木ではない」
- 「企業の都合で生態系を壊すべきではない」
- 「一度壊れた自然は、元には戻らない」
この声に応え、著名人の野口健氏や冨永愛氏らもSNSで反対を表明。メディアでも取り上げられ、社会的な問題意識が急速に拡大しています。
■ 考察:私たちは「再エネ」を誤解していないか?
再生可能エネルギーの普及は、脱炭素社会の実現に不可欠です。気候変動への対応として、ソーラー、風力、地熱といった選択肢は歓迎されるべきでしょう。
しかし、「自然を守る」という名目で**別の自然を破壊してよいのか?**という矛盾が、今の釧路で問われています。
⚠️ 釧路のケースに見られる問題点:
- 制度(FIT)が“設置場所”の適正を問わない
- 地域と企業との協議が不十分
- 住民説明と事実のギャップが信頼を失わせる
- 自然の価値が経済論理で軽視される
「エコ」の名のもとに進む開発が、真の意味で持続可能なのか?──制度設計者、企業、行政、市民すべてが、この問いから逃れてはならない時期にきています。
■ 市議の声:「ゼロか100かではない」
釧路市議の一人はnoteで次のように発信しています:
「メガソーラー=悪という極論も、再エネ=善という盲信も危険だ。環境影響評価がまともに機能していないことが問題であり、“見直すべきは制度設計そのもの”だ。」
この言葉が示すのは、バランスと丁寧な合意形成の重要性です。再エネ推進と自然保護は対立構造ではなく、共存の道を探る知恵が求められています。
■ 私たちにできること:ただの傍観者にならない
釧路のメガソーラー問題は、地方の一案件に見えるかもしれません。しかしその本質は、
- 「制度の設計は適切か?」
- 「地域の声は届いているか?」
- 「開発の手法は持続可能か?」
という、全国どこでも起こり得る問題の縮図です。
🎯まとめ:静かに進む「風景の消失」に、声をあげる勇気を
大規模開発の影に沈む、生きものの営み。
制度の網をくぐる、倫理なき利益構造。
説明と現実のズレが生む、分断と不信。
それでも、釧路の市民たちは動きました。市長は宣言を出し、市議たちは条例を検討し、市民は声をあげ、署名を集めました。
そして今、私たちが問われています。
「この未来を、見過ごすのか、変えるのか。」
