🔶 セルフレジの「省人化」は、対策を怠ると“万引き増”に直結する
セルフレジは、人手不足時代の救世主として多くの小売業に導入されてきました。
しかしその裏で、万引きや“スキャン漏れによる未精算”の急増という新たな問題が静かに広がっています。
「人件費を減らすつもりが、万引き損失で売上が減ってしまった」
こうした声が、アメリカのWalmartやTargetだけでなく、日本の中規模スーパーからも上がっています。
セルフレジは、便利な反面「監視の穴」になりやすい。
本記事では、店側が実際に行って成果を上げた万引き防止策を、教育・機器・心理の3つの軸から解説します。
🔶 背景:なぜセルフレジは「万引きの温床」になりやすいのか?
📌 1. 客の行動が“見えにくく”なる構造
有人レジでは「スキャン → 精算 → 袋詰め」までが一連の流れとして、スタッフが目視できます。
しかしセルフレジでは、客が自分で操作するため、ミスと故意の区別が困難です。
- スキャン漏れに気づかない
- セット商品を1本分だけスキャン
- あえてスキャンしない(確信犯)
これらがすべて、“一見同じ行動”に見えてしまうため、店側の対応が難しくなります。
📌 2. 実際に誤認・過失・悪意が混在している
Fit Small Businessによる調査では、
「スキャンし忘れに気づかないまま店を出てしまった」
と答えた人が約21%。さらにそのうちの一部が「気づいたが戻らなかった」とも回答しています。
つまり、悪意のない行動が“万引き”とみなされる可能性がある一方、
確信犯が巧妙にシステムの穴を突くケースも存在するのです。
📌 3. 海外ではセルフレジをやめる動きも
- Walmart(米)やTargetなどでは、一部店舗でセルフレジ廃止の動きが出ています。
- 原因は万引き被害の増加と、オペレーションコスト(監視や機器メンテナンス)の見合わなさ。
→ つまり「人を減らした分、万引きで損失が増えた」という本末転倒な状況が起きているのです。
🔶 ケーススタディ:香川県で成功した“人の力”による万引き防止策
かつて万引き率全国ワースト1位だった香川県。
この地域で劇的な改善を達成したのが、香川大学×香川県警の協力で生まれた教育プログラムです。
▶ 実施内容:
- 警察監修の「セルフレジ対応マニュアル」配布
- 万引きGメンによる店員トレーニング
- 定期的なケースレビューと対応訓練
▶ 成果:
- 実施開始後、万引きが毎年10%以上減少
- 警察庁長官賞を受賞する成果を上げた
- 対象スーパーでは「レジ対応力の向上により客とのトラブルも減少」
▶ ポイント:
- 機械ではなく、人の接し方や言葉の選び方が最大の抑止力になる
- 「疑う目」ではなく、「見守る存在」が犯罪心理を抑える効果を持つ
🔶 専門家の視点:なぜ“教育”が効果的なのか?
香川大学・大久保智生准教授(万引き研究)によれば、
「セルフレジは“匿名性”と“自動化”により、人の倫理判断を揺るがしやすい」とされています。
また、
「不正を防ぐためには、機器強化よりも、スタッフの心理的対応や“居心地の良い緊張感”をつくることの方が有効」
とも語っています。
つまり、万引きを抑止するのは“罰”ではなく、“見られている”という意識そのものなのです。
🔷 解決策:セルフレジで万引きを防ぐための7つの実践アプローチ
✅ 1. AIカメラによる不審動作検知を導入する
- 近年のAI搭載カメラは、「袋に先に入れる動作」「スキャン漏れ」などをリアルタイムで検知可能。
- 店員が逐一見るのではなく、不審な動きだけ通知する方式で省力化と抑止を両立できます。
🧠 注意点:映像活用は「監視」ではなく「安全設計」として伝えることが重要。過剰監視感を避けましょう。
✅ 2. 高画質な“見られている感”をつくるカメラ配置
- 人は「見られている」と感じると行動が変わるという心理効果(社会的監視効果)があります。
- ダミーカメラでも一定の効果あり。モニター付きカメラで「今の自分」が映る仕組みは特に強力。
🧠 実例:Biz-rakuでは「目の高さに映像を映すディスプレイ」が有効と報告。
✅ 3. 店員の“間合い”を整える教育
- 声かけが逆効果になるケースもあるため、「目の前に立たないが、近くにいる」適度な距離感が必要です。
- 香川県では、「声をかける前の目線の使い方」「プレッシャーのかけ方」も教育項目に含まれていました。
🧠 教育のコツ:防犯Gメンや地元警察との連携で、現場に即したトレーニングが有効。
✅ 4. 商品スキャン後の重量チェックを徹底できる導線設計
- 商品がスキャンされた後、必ず「指定エリア」に置かれるように設計しましょう。
- 導線を狭めたり、棚の配置で“スキャン→重量計”の一方通行をつくると、誤操作を防げます。
🧠 改善ポイント:袋を“スキャナーの隣”ではなく“計量ゾーンの奥”に配置するだけでも違います。
✅ 5. レジ周辺の動線を監視可能な“半オープン設計”にする
- 完全な無人レーンより、スタッフが並行して複数レーンを見渡せる配置が望ましい。
- 万引き防止だけでなく、「困ってる客への介入」もスムーズになり、顧客満足度の向上にも寄与。
✅ 6. アナウンス・モニターによる心理的抑止
- 定期的に流れる「万引き対策にご協力ください」「レジ操作に不安がある場合はスタッフにお声がけを」といったやさしい文面の音声・文字アナウンスも有効。
- 「不正防止中」ではなく、「安心して使えるセルフレジづくり中」と伝える工夫が大切。
✅ 7. レジ別に“監視力の濃淡”をつける運用も選択肢に
- 高リスク商品(酒類・化粧品など)のみ有人レジか高監視型セルフレジに限定するという方法も。
- 万引きが目立つ時間帯だけ一時的に有人対応へ切り替えるハイブリッド運用もコストと抑止のバランスをとるうえで現実的。
🔷 考察:ハードとソフトのどちらが“本当の防犯”か?
AI・カメラ・センサーの進化は確かに心強いですが、
最終的には「その空間にいる人がどんな気持ちで操作しているか」が大きな鍵になります。
- 疑われないように動く客
- 見守ってくれる店員
- それをそっと支える仕組み
この3層構造こそが、**「防犯」ではなく「安心の設計」**になるのではないでしょうか。
香川大学の成功事例が証明しているのは、
人が信頼される空間では、犯罪も減るという当たり前だけど忘れられがちな原則です。
🧭 万引き対策は「疑う」より「見守る」設計で
「どう防ぐか」だけでなく、「どう信じるか」も万引き対策の一部です。
- 店員の“間合い”
- 客の“心理”
- 設計と教育の“ハイブリッド”
これらを組み合わせていくことで、“疑い”が前提にならない店づくりが可能になります。
導入機器の性能に左右されず、どの店でも取り入れられる防止策は確実に存在します。
それは、あなたの店舗の「接客文化」や「空間設計」から始まります。
