■ なぜ今「王政復活」なのか?その背後にある“本当の叫び”
2025年、ネパール各地で広がった「Gen Zデモ」は、単なるSNS規制への反発ではなく、政治不信・汚職・貧困・未来への不安が積み重なった怒りの噴出でした。
そしてその矛先のひとつとして、「ギャネンドラ元国王」=過去の安定象徴が持ち出され、若者たちは王政復活をスローガンに掲げ始めます。
重要なのは、「王政に戻せば全て解決する」という単純な話ではなく、現体制に対する絶望から“別の選択肢”を求める声が可視化された点です。
■ この動きを読み解く3つの視点
- 現場で何が起きたか(事実ベース)
- 市民・若者たちの声から見える切実な思い
- 専門家や報道による制度的リスクと分析
■ 現象:抗議デモの広がりと「王政復活」コールの再燃
- 2025年3月以降、ネパール全土で**「Gen Z世代」中心の大規模なデモ**が発生。
- 発端はSNS規制への抗議だったが、次第に「政府の腐敗」「無能な政治」「将来の不安」へと怒りが向かう。
- カトマンズ空港にギャネンドラ元国王が帰還した際、数千人規模で「王よ戻れ」のチャント。
- 「Raja aau, Desh bachau(王よ来たれ、国を救え)」のスローガンが広まり、王政復活の機運が沸騰。
📌 実際の出来事として:
- 3月末のデモでは死者2名、負傷112名(うち警官77名)という深刻な衝突も。
- 100名超の参加者が拘束され、政権への直接的圧力が高まる。
- ついに首相が辞任。臨時政府や憲法改正の議論が始まる。
■ 声:当事者の実感「これは革命。いまこそ僕らの番だ」
多くの報道や個人証言に共通しているのは、怒り・失望・恐怖といった感情が根底にあるという点です。
「SNS禁止だけが理由じゃない。就職できない。親族ばかり優遇される。だからこそ叫んでる」(20代男性)
「これは革命なんだ。僕たちが未来をつくる時代なんだよ」(18歳のSauravさん)
- 市民は「王政復活が現実的」とは思っていないまでも、“いっそ戻してしまえ”という極端な心理状態。
- ギャネンドラ氏は過去にクーデターや統治の失敗もあったが、それでも「今よりマシだった」という声も。
- **感情と現実の“ズレ”**が、デモの熱狂や混乱を加速している。
■ 専門家の分析:制度崩壊と復古のリスク
国際危機グループや政治専門家たちは、次のように警鐘を鳴らしています。
- 「王政復活は一見“秩序の回復”に見えるが、実際は民主主義の根幹を脅かす危険な逆流だ」
- 「過去に戻ることは、前に進む努力を放棄することに等しい」
そして報道機関は、以下のように中立的な視点で見守っています。
- Reuters:「Gen Zデモが首相辞任にまで至ったのは歴史的。だがその先は不透明」
- The Guardian:「若者たちの運動には希望もあるが、方向性が明確でないことが不安材料」
- Yahoo(Crisis Group):「制度改革こそが唯一の処方箋だが、現実には進まないだろう」
■ 考察:なぜ若者は「王政」を望むのか?その背景にある3つの心理
① ノスタルジー(過去の安定)
「昔の王様は敬意を持たれていた。混乱はなかった」
→ 不安定な現状に対し、王政時代への幻想的な安心感がある。
② 絶望(今への不信)
「政治は腐敗だらけ。選んでも変わらない」
→ 民主主義が“選択肢を奪う構造”にすら感じられる瞬間がある。
③ 象徴化(敵と希望の構図)
「敵=政府、希望=かつての王」
→ 実態よりも、物語や象徴としてギャネンドラ氏が感情の受け皿に。
■ この混乱の中、ネパール社会に残されたルートとは?
現在、ネパールが直面しているのは単なる政権交代ではなく、「制度の信頼回復」か「制度そのものの破壊」かという二択に近い状況です。
ここで問われるのは:
- 過去に戻るのか?
- それとも前に進むのか?
その問いに対し、次の3つの方向性が提起されています。
① 一時的な王政復帰(象徴的ポストとして)
- ギャネンドラ氏を「憲法上の象徴的存在」として戻す案。
- インドの大統領制のように、実権は持たず文化的シンボルとする。
- RPP(王政支持政党)などが模索中だが、現実的には困難。
🌀 リスク:
- 一度制度を変えると、元に戻すハードルが極めて高い。
- 象徴から再び実権を持つ流れになる恐れもあり、民主主義に逆行する。
② 現政権の刷新と憲法改正
- 若者が望むのは「王」ではなく、「正直で機能する政治」。
- 既存政党・既得権益層を排除した新たな選挙制度の設計が議論に。
- 市長・SNSインフルエンサー・若手起業家などが政治への参画を表明。
🌀 課題:
- 一気に制度を変えることは難しく、時間がかかる。
- 結局は既存構造に吸収される可能性もある。
③ デモの持続と市民自治の試み
- 「王政支持」ではなく、「市民が政府をチェックする機能」を高める方向。
- 各地で自発的な自治体運営、ボランティア支援、教育改革の動きも。
- 「行動こそが変革」だという価値観が広がっている。
🌀 展望:
- 成功すればネパール史上初の「下からの制度形成」に繋がる。
- だが国家単位の統治まで拡張できるかは未知数。
■ 混乱の中にある“前向きな兆し”
一見、混沌としているネパール情勢ですが、次のような希望の兆しが見られます:
- 「声を上げたことで首相が辞任」という事実
→ デモが“無力ではない”と示された点は大きい - 若者たちがSNSや街頭で新しいリーダーシップを模索している
→ ギャネンドラ氏への幻想から、自分たちの手で未来を変える意識への転換も進行中 - 海外からの注目と支援
→ 報道や国際機関が事態を静観せず、民主主義の土台を支える動きも見える
■ まとめ:ギャネンドラ氏は「過去」か、それとも「呼び水」か
ギャネンドラ元国王が再び注目を浴びているのは、「過去の安定が恋しい」という切実な感情の象徴であり、同時に政治的無力感の裏返しです。
王政復活というアイデアが現実的かどうかではなく、その言葉が人々の口にのぼる時点で、今の制度がそれだけ信頼を失っているということ。
最終的に必要なのは、制度を過去に戻すことではなく、「信頼を再設計すること」です。
