◆えっ、200兆円? それって本当?
SNSを眺めていたある日、目に飛び込んできた投稿。
「モルガン・スタンレーが200兆円分の株を買ったらしい」
「ついに動いたか。これは本格的に相場が変わる」
「1年で5800%の可能性も?」
目を疑うような巨大な数字、そして“誰かがすでに未来を知っているかのような言い方”。
でも、ちょっと待ってください。
私たちはこれを、どこまで信じていいのでしょうか?
◆なぜこんな投稿が繰り返し流れてくるのか
実際に「モルガン・スタンレーが200兆円分の株を購入した」という公式発表は確認されていません。
また、SECや日本の金融庁、ロイターや日経などの主要メディアにもそのような報道は存在しないことが調査で判明しています。
では、なぜそのような投稿がSNSで定期的に現れ、しかも多くの「いいね」やリポストを集めるのでしょうか?
背景には、誤情報の構造的な拡散メカニズムと、市場を“意図的に揺らす”存在が隠れていることがあります。
◆「数字」が人を動かす。そして信じさせる
まず注目したいのが、「200兆円」という圧倒的な数字。
現実味のない金額でも、人は数字が大きければ大きいほど、**「何か特別なことが起きている」**と感じやすくなります。
さらに、それが「実在の大手金融機関」とセットになることで、真実味が増してしまう。
SNSでは、
- 情報源が不明確でも
- 誇張された言葉がついていても
- 数字と企業名がセットで提示されると
つい「事実」として受け取ってしまいやすいのです。
実際、個人投資家がこう語っていました。
「SNSで何度か見かけると、最初は疑ってた話でも“本当っぽいな”って思っちゃう。特に自分の持ってる銘柄に関係してたりすると、信じたくなりますよね…」
◆実際にあった“操作”の事例から学ぶ
SNSでの「誇張された投資話」の背景には、時に意図的に市場を動かそうとする試みが含まれることがあります。ここで、実際に起きた2つの事件を見てみましょう。
🔹事例1:SMBC日興証券「終値操作」事件(日本)
日本の大手証券会社・SMBC日興証券の元幹部ら5人が、
株の終値を人為的に高く保つような注文を繰り返していたとして、有罪判決を受けました。
この操作は、指数や運用評価に影響を与えるため、全体の市場参加者の判断にまで影響を及ぼす危険性があります。
金融庁もこの件を「重大な市場操作」と認定。
一般投資家にとっても、**見えないところで価格が“整えられていた”**という意味で、大きな警鐘となりました。
🔹事例2:オーストラリア Telegram株操作事件(2024年)
オーストラリアでは、4人の個人がTelegramグループで協力し、
「この株が爆上がりするぞ」とSNSで拡散。実際には自分たちが事前に仕込んでいた株を“釣り上げ”、その後高値で売り抜ける“Pump & Dump(吊り上げて落とす)”の典型例。
金融当局(ASIC)が刑事訴追に踏み切るという異例の対応を取りました。
この事件は、SNS上での情報拡散が株価を動かし得ることを示す象徴的なケースです。
◆では、モルガン・スタンレーの話も「仕掛け」なのか?
現時点で「200兆株購入」の話が完全な操作目的で投稿されていると断定することはできません。
しかし、以下のような要素がある投稿には注意が必要です。
- 数字がやたらと大きい(兆単位など)
- 出典が「Telegramで流れた」「内部情報」など曖昧
- 「絶対上がる」「1年で1000%」といった極端な表現
- 投稿者が“誰だか分からない”
こうした要素が含まれた投稿は、市場の期待感や恐怖感を煽る目的を持っている可能性が高く、安易に信じて動くと投資判断を誤る危険があります。
◆じゃあ、何を信じたらいいの?
前編では、「モルガン・スタンレー200兆購入」という噂が
なぜSNSで繰り返されるのか? それが意図的操作とどう結びつくのか?
そして、実際に起きた市場操作事件を通じて、背景の“匂い”を見てきました。
ここで多くの人が感じるのは、こういうことではないでしょうか?
「結局、誰の言うことを信じればいいの?」
「正しい情報って、どこで見つけられるの?」
そんな迷いに対して、私たちができることは
**「信じる前に、確かめる」**という習慣を持つことです。
◆“これって本当?”と思ったときに使えるチェックリスト
SNSの投稿を見る時、「この話、本当かな?」と思ったときに役立つ視点を、以下にまとめます。
✅ 投稿チェックの7つの質問
| チェック項目 | 見分けるポイント |
|---|---|
| ① 出典はあるか? | 公式発表や報道のURLがあるか。画像だけの投稿は要注意。 |
| ② 誰が言っているか? | 匿名アカウント、フォロワー数が少ない人の“確信的な発言”は警戒。 |
| ③ 数字が極端すぎないか? | 「100兆円」「1年で1000%」などの桁違いは煽りの可能性大。 |
| ④ 断定口調になっていないか? | 「絶対上がる」「確定情報」と断言されていたら一歩引く。 |
| ⑤ 感情的な言葉で煽っていないか? | 「チャンス逃すな」「今すぐ買え!」など急かす投稿は要注意。 |
| ⑥ 関連ニュースと一致しているか? | 自分でもGoogleニュースや公式サイトで調べてみる。 |
| ⑦ 他の人も言っているか? | 同じ情報でも“誰がどう言ってるか”を比べてみる。 |
このチェックを習慣にすることで、SNSの情報に流されるのではなく、“使えるか見極める”目線を持てるようになります。
◆信じることは“悪い”ことじゃない。でも…
投資や経済の世界では、「先に気づいた人」が利益を得る場面も多くあります。
だからこそ、“誰よりも早く情報を得たい”という欲望が生まれます。
しかしその欲望が強すぎると、**「確かめる前に信じる」→「誤情報を拡散する側になる」**という危ういサイクルに巻き込まれてしまいます。
これは投資だけでなく、世の中すべての「情報の受け取り方」に通じる話です。
“信じる”は行動。
“疑う”は責任。
私たちがSNSで情報を得るというのは、常にこの2つの間を行き来する行動なんです。
◆あらためて、モルガン・スタンレー200兆説とは何だったのか?
調査の結果、「モルガン・スタンレーが200兆円分の株を買った」という公式な証拠は見つかっていません。
この数字が広まった背景には:
- 「投資総額」や「将来的な期待」が誤解されて伝わった
- SNS投稿が「見出しだけで拡散」されてしまった
- 投資系インフルエンサーや煽動的アカウントが意図的に数字を使って注目を集めた
といった複数の要因が絡んでいることが分かっています。
中には、匿名アカウントが「Telegramで噂されている」「自分は情報筋から聞いた」として投稿し、それが連鎖的に信じられ、拡散される現象も見られました。
◆私たちにできることは、“冷静な観察者”でいること
価格操作や過剰な情報演出は、今後も繰り返されます。
でも、私たちが「全部信じる必要はない」と分かっているだけで、
誰かに“振り回されない投資”ができるようになります。
最後にこんな教訓を添えて、この記事を締めくくります。
情報は“力”にもなるし、“罠”にもなる。
でも、それを“選ぶ力”は、あなたの中にある。
