「通常価格から○円引き!」――本当にお得?
私たちは日々の買い物で、値引き表示やセール価格に目を奪われます。しかし、そこに“誤解させる仕組み”が潜んでいたとしたら?この記事では、2025年9月に起きた「ジャパネットたかた」への行政措置をきっかけに、「有利誤認表示」や「二重価格表示」のリスクについて掘り下げ、消費者・事業者の両面から注意すべきポイントを整理します。
◆「通常価格29,980円 → 特別価格19,980円」の何が問題だったのか?
2025年9月、株式会社ジャパネットたかたは、おせち商品の販売に関する広告表示が**景品表示法違反(有利誤認)**にあたるとして、消費者庁と公正取引委員会から措置命令を受けました。
表示されたのは:
- 通常価格:29,980円(税込)
- キャンペーン価格:19,980円(税込)
- 限定数:1000個、早期予約特典
という形式のセール情報。
一見すると、明確な値引き表示と見られます。しかし問題は、「通常価格」とされている29,980円という価格が、その時点で販売実績も販売計画も確定していなかったことにありました。
❌ 比較価格の“根拠”が不明確だった
行政側は、「合理的かつ確実な計画がないまま通常価格を表示した」と判断。
つまり、消費者に対して“今買わなきゃ損”と思わせるような表示でありながら、将来的にその価格で販売される保証がなかったため、「実際よりもお得に見せかけた」=有利誤認表示とされたのです。
企業側は、「過去にも類似商品の販売実績があった」として反論しましたが、それでも措置命令は回避できませんでした。
◆過去にも…テレビやエアコンの“仮の通常価格”で課徴金も
実は、ジャパネットたかたに対する有利誤認の指摘は初めてではありません。2018年にも同社は、エアコンやテレビの販売価格表示をめぐって消費者庁から是正措置を受け、総額約5,180万円の課徴金を命じられています。
そのときの広告は:
- 「ジャパネット通常価格:89,800円」
- 「値引き後価格:64,800円」
という表示でしたが、実際にはその「通常価格」で継続的に販売していた形跡は乏しく、広告のオリジナリティとして「お得感」を演出したに過ぎないとされました。
ここでも焦点は、「通常価格」として表示された比較価格が、実際の販売状況と一致していない点にありました。
◆似たようなケースは他にもある? 類似事例から学ぶ
こうした「二重価格表示」の問題は、ジャパネットたかたに限りません。以下は、同様の論点が見られる類似事例です。
■ ケース①:ECサイト「希望小売価格」との比較で有利誤認(参考:消費者庁事例集)
ある通販サイトが、「メーカー希望小売価格 39,800円 → 当店価格 14,800円」と表示していましたが、その商品はメーカーが希望小売価格を公表していない型番商品でした。
そのため、「存在しない希望価格と比べて安いように見せる」表示であり、これも景品表示法違反に該当。
👉 比較対象価格に“客観的根拠”がない場合、有利誤認にあたるという点で、ジャパネット事例と同様です。
■ ケース②:楽天ショップでの「タイムセール価格」が常時掲載(参考:法律事務所コラム)
ある楽天ショップでは、「あと〇時間で終了!」とタイムセール価格が常時表示されており、実際にはセールがループして続いていました。
消費者は「今だけ特別価格」と誤解しますが、これも実質的には通常価格と同等。
この場合、「期間限定」「先着」などの強調表示が虚偽に近くなるリスクがあります。
◆なぜ“有利誤認”が問題になるのか?
ここで一度、なぜこのような表示が法律で厳しく規制されるのかを考えてみましょう。
🔍 誤認は“購買行動”を左右するから
価格は、購買判断に直結する情報です。
比較対象価格を高く見せることで、本来の価格以上の「お得感」が演出され、消費者が急いで買ってしまう――これは消費者の“意思決定の自由”を奪う行為でもあります。
特に近年はネット通販の普及により、「見た目上のお得さ」が売上を左右する時代になっており、事業者による“演出”がエスカレートしやすい環境が整っています。
🔍 悪意がなくても処分される時代に
今回のジャパネットの事例でも、企業側は「意図的な誤認表示ではない」と説明しています。しかし、法律上は**「実際に誤認させる表示があったかどうか」**が問われます。
意図の有無にかかわらず、「客観的にみて消費者が誤解する表現」であれば、違法性が認定されるのです。
◆消費者としてできる防衛策はあるのか?
「また安くなってる」「急がなきゃ」と思ったときこそ、その価格の根拠を冷静に見直すことが大切です。
✅ チェックポイント例
- その「通常価格」は、他のサイトや店舗でも使われているか?
- 「タイムセール」や「限定価格」が、本当に“今だけ”か?
- 「メーカー希望価格」が明記されているなら、実際にメーカーの公式サイトに存在するか?
そして何より、「急かされる広告」には少し立ち止まって考える――そんな習慣が、損を防ぐ第一歩です。
◆事業者側が注意すべき視点とは?
特に中小規模のECサイトや広告代理店が注意すべきポイントとしては、次のようなものがあります:
| 項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 比較価格の根拠 | 過去の販売実績、販売予定が実在するか? |
| 表示の明瞭性 | 条件・対象・期間が明示されているか? |
| 更新サイクル | 広告の内容が古くなっていないか? |
| 表示ルールの把握 | 景品表示法・消費者庁のガイドラインに準拠しているか? |
✅ まとめ:安さの「演出」に踊らされないために
ジャパネットたかたのような大手でさえ、有利誤認表示に問われる時代。消費者・企業どちらにとっても、「表示の裏にある“根拠”」を見極める目が求められています。
買い手は冷静に。
売り手は誠実に。
価格表示が信頼できる社会は、こうした一つひとつの意識から生まれていくのです。
