■ なぜ今「カンボジア人ドライバー」が注目されているのか?
日本の物流業界では、ドライバー不足がかつてないほど深刻化しています。
政府の試算では、2030年には日本国内の物流で「3割以上の荷物が運べなくなる」可能性があるとされています(内閣府試算より)。
この背景には、少子高齢化、長時間労働の敬遠、運送業界全体の待遇改善の遅れなど、複数の要因が絡んでいます。
こうした危機感から、政府は「特定技能制度」の枠を拡大し、外国人労働者の受け入れを進めてきました。
その中で、注目されているのがカンボジア人材の育成です。
彼らはなぜ「即戦力」になると言われるのでしょうか?
■ 不安の声:「日本語は?」「交通ルールは?」「本当に安全なの?」
制度への期待がある一方で、SNSなどでは以下のような声も上がっています。
- 「日本語が通じなかったら事故が起きそう…」
- 「待遇の安さで外国人を使い捨てにしているのでは?」
- 「トラックの操作は難しい。すぐできるわけないよね?」
- 「日本人の職を奪うのでは?」
こうした声は、**根拠のない不安だけではなく、“構造的な疑問”**でもあります。
では実際、カンボジアから来る外国人ドライバーたちは、どのような教育・制度のもとで来日しているのでしょうか?
具体的に見てみましょう。
■ 教育現場の実態:カンボジアの“日本式”自動車学校とは?
福岡県に本拠を持つ外国人ドライバー支援機構(FDSO)は、2018年にカンボジアの首都プノンペンに**日本式カリキュラムの自動車学校「MINAMI DRIVING SCHOOL」**を設立しました。
🔹 教育のポイント:
- 日本語+日本の交通ルールをセットで教育
- 約100時間以上の授業(技能・座学・日本文化)
- 日本人指導員が現地に常駐し、現地語でのサポートも可
- 特定技能制度の試験対策も事前に完了
- 安全運転ができない場合は“来日させない”制度
つまり、「とにかく来てもらって、あとは現場で慣れてね」ではなく、
**“来日前に日本基準をクリアした人だけが現場に立つ”**という構造が取られています。
加えて、カンボジアの道路交通法は、日本の支援で作られた経緯があり、標識や法令が日本と似ているというメリットも。
■ 実例:1期生ドライバー2名が日本で免許試験に合格
2024年夏、FDSOで育成された第1期のカンボジア人ドライバー2名が来日。
日本で大型免許試験に挑み、無事合格。すでに熊本県の運送会社から内定を得ています。
2人とも、以下のような想いを持っています。
- 「日本で働くのは家族のため。今は一緒に住めなくて少し寂しいけど、頑張りたい」
- 「整備士としての経験も活かして、日本車に関わりたい」
教育体制だけでなく、生活支援(買い物・日本語対応)や、職場との橋渡し支援まで行われており、
現地〜来日〜職場の連携体制が一貫しているのがこの制度の特徴です。
■ よくある誤解と正確な情報
誤解①:「日本語も運転もままならないまま来ているのでは?」
→ 答え:NO
実際には、日本語+安全教育+特定技能試験の準備を終えて来日します。
特定技能の制度上も、日本語・試験合格は必須条件。
誤解②:「事故を起こしたら責任は誰が取るの?」
→ 答え:日本国内の労働契約と保険制度に準拠
雇用主が責任を持ち、保険加入・指導・管理義務も日本企業側にあります。
無責任に放任されているわけではありません。
誤解③:「安くこき使われているのでは?」
→ 答え:制度上、日本人と同等の待遇が前提
特定技能制度では、労働条件の差別は禁止されています。
現場での監督・定期報告制度もあります。
誤解④:「地方では受け入れ体制が整っていないのでは?」
→ 答え:段階的導入と外部支援で補完中
確かに全ての中小企業が整っているわけではないが、支援機構が地方企業とも連携して教育を代行・補完しています。
■ なぜ“日本式”が重要なのか?──制度設計と相性の問題
ITEJ(国際輸送事業振興協会)によると、
単に人を呼べば良いわけではなく、「日本の運送現場に合わせた制度設計と教育」がなければトラブルの元になります。
その意味で、FDSOが行っている「カンボジアでの日本式教育」+「段階評価」+「就労先とのマッチング」は、
現場ニーズと法制度の橋渡しとして理にかなった形。
また、nauto社の交通安全コラムでも、「交通マナー・暗黙の了解・日本語での緊急対応」などを
明示的に教育する必要性が指摘されており、それに対応する体制が整えられている点は評価されています。
■ 外国人ドライバーに関するリスクと、その対策
制度や教育が整ってきているとはいえ、やはり不安をゼロにはできません。
では、どんなリスクが起こり得て、それにどのような対策が取られているのか?
以下に整理して紹介します。
▶ リスク①:交通ルール・マナーの理解不足
- 日本特有の「譲り合い」や「暗黙のマナー」に対応できない可能性
→ 対策:
教育段階から日本式ルールとマナー(例:一時停止の徹底、優先道路意識、あいさつ)を徹底指導。
実地試験では、日本人と同等以上の評価基準で合否を決定。
▶ リスク②:事故対応・緊急時の判断ミス
- 日本語での通報、保険対応、顧客との会話に支障が出る可能性
→ 対策:
日本語教育に加え、実務想定ロールプレイを実施(例:「事故が起きたときどう話すか」など)。
加えて、企業側が生活サポート担当者を配置し、通訳や相談窓口を設けているケースも。
▶ リスク③:勤務先とのミスマッチ・離職
- 来日後に「思っていた仕事と違った」「生活が合わない」という問題
→ 対策:
事前に「就業内容」「勤務先の条件」「生活環境」の説明会を実施。
職場見学や“現地からのオンライン対話”でミスマッチを防止。
離職者が出た場合も、転職支援・再教育を受けやすい仕組みが整備されつつある。
■ 制度的な保証はあるのか?
はい、あります。外国人ドライバーは**「特定技能制度」**の枠組みで受け入れられます。
この制度には以下の特徴があります:
- 日本語能力と技能試験の合格が必須
- 就労先と本人の間に「支援計画」が必要
- 労働条件の記録と提出義務がある
- 企業は、外国人労働者の生活支援を義務付けられる
- 不適切な就労環境が見つかれば、在留資格の停止や企業への指導が可能
つまり、日本人よりも制度上“守られている”部分も多いのです。
■ 今後の展望:この取り組みは広がるのか?
FDSOや同様の機関を中心に、今後カンボジア人だけでなく、フィリピン・インドネシア・ベトナムなど
日本交通ルールと親和性のある国々との連携が進む可能性があります。
政府も、2024年4月から正式に「自動車運送業」を特定技能の対象に追加しており、
法的にも受け入れが本格化していく段階です。
ただし、急速な拡大はトラブルの元にもなりかねないため、段階的に教育と制度を結びつけることが今後の課題です。
■ まとめ:安心して任せるために、見るべきポイントは?
最後に、「もしあなたの近くで外国人ドライバーが導入されるとしたら?」という視点で、
チェックしておきたい安心ポイントをまとめます。
✅ 安心チェックリスト:
- □ 来日前に「日本語+交通教育+試験」をクリアしているか
- □ 日本式の教習・教育を受けた現地スクールが存在するか
- □ 勤務先企業が支援計画を策定しているか(制度上の義務)
- □ 生活支援(通訳・買い物・移動)などの体制があるか
- □ 免許取得や資格認定の“見える成果”があるか
- □ 待遇が日本人と同等になっているか(賃金・労働時間など)
💬 一言で言えば:
「外国人だから不安」ではなく、「どう育てて、どう支えるか」が問われている──
この仕組みは、その問いに対する“真面目な答え”のひとつなのです。
