【1】宗教的虐待は、今も「家庭の中」で静かに起きている
宗教的虐待とは、信仰を背景に子どもの自由や権利を奪う行為です。
極端な献金、進学の断念、恋愛や生活の制限、身体的・性的暴力まで、多くは「家族の中」で起き、表面化しにくいのが特徴です。
近年は、日本でも統一教会(世界平和統一家庭連合)をめぐる議論や、山上徹也被告の裁判などを通じて、その存在がようやく言葉として共有され始めました。
ただしこれは日本だけの問題ではなく、世界中で宗教的権威の下に苦しむ子どもたちがいます。
【2】宗教的虐待とは何か、実例を通じて把握する
◆ 日本:山上徹也被告のケース
2022年の安倍晋三元首相銃撃事件で逮捕された山上徹也被告は、以下のような背景を持っていました。
- 母親が統一教会に入信し、約1億円もの献金を行い家庭が崩壊
- 自身の進学・生活・将来に著しい制約を受けた
- 弁護団は「宗教的虐待」が事件の根底にあると主張(2025年裁判で争点に)
経済的困窮だけでなく、「信仰を強いられる家庭」の中で子どもが抱える無力感や孤独が問題視されています。
◆ 日本の他の実例(宗教二世の声)
- 教義に反する恋愛は「地獄に落ちる」と教え込まれ、青春期の人間関係を断たれた
- 親の信仰で医療を拒否され、病気治療が遅れた
- 家族から「信じない子は悪魔」と言われ、家庭内で孤立
これらは、すべて「宗教を理由にした制限」であり、本来子どもが持つはずの自由を奪う行為です。
【3】海外の実例と比較し、見えにくさに気づく
宗教的虐待は、世界でも問題になっています。
◉ アメリカ:秘密主義教団「Two by Twos」
- 教団の内部で性的虐待が複数告発され、FBIが捜査中
- 子どもが教義を理由に抵抗できず、外部相談もできなかった
◉ オーストラリア:宗教内の子ども虐待が0.4%と推定
- 統計的に数万人規模の被害が存在
- 被害者が沈黙する文化が障壁に
◉ イギリス:すべての宗教で報告される虐待
- キリスト教、イスラム教、ユダヤ教など多宗派で性的虐待・心理的支配が発覚
- 子どもに対する権威乱用や外部機関との連携不足が構造的問題
◉ 共通点と日本との比較
| 観点 | 共通点 | 日本の特徴 |
|---|---|---|
| 教義の強制 | 自由の制限・恐怖による支配 | 医療・恋愛・進学などの制限が多い |
| 経済的被害 | 献金・奉仕の強制 | 統一教会などの高額献金に伴う家庭崩壊が顕著 |
| 性的虐待 | 指導者による行為が複数報告 | 山上事件では性加害ではなく心理・経済面が中心 |
| 被害の見えにくさ | 教団の閉鎖性・文化的沈黙 | 家庭内で完結するため外部が介入しづらい |
【4】気づきと支援の広がりは始まっている
● 2024年以降、日本政府も対応を強化中
- 文科省・厚労省が「宗教に関連する児童虐待Q&A」を発行
- 児童相談所も宗教的な背景のある虐待に対応できるよう研修
- 弁護士会が「宗教二世」向けのホットラインを設置
● 支援を受ける・情報を得る手段も
| 支援先 | 内容 |
|---|---|
| NPO法人リトル・ライツ | 宗教二世の相談・発信支援 |
| 宗教虐待サポートの会 | 被害体験の共有と回復支援 |
| 弁護士会の無料法律相談 | 宗教的虐待を含む家庭問題の相談可 |
● あなた自身が取れるアクションもある
- 「なんか変かも?」と思ったときに、家族の信仰であっても遠慮なく外部に相談してよい
- 教育現場・福祉現場の方は「宗教だから介入できない」と思い込まず、子どもの状況を丁寧に観察することが重要
- SNS上でも「二世問題」に共感を寄せる発信が増えている
【5】考察:宗教が悪なのではない、「関係性の構造」が問題
宗教的虐待の問題を語るとき、「信仰そのものが悪」だと受け取られることがありますが、それは正確ではありません。
問題の本質は、「信仰が親の価値観を絶対化し、子どもの人権や自由を抑圧する構造」そのものです。
- 「子どもの選択肢を奪うほどに信仰を優先する」
- 「子どもの声を“教義違反”として封じる」
こうした構造が家庭や教団内で繰り返されることで、知らぬ間に“虐待”が成立してしまうのです。
信仰と家庭の中立性、子どもの選択の自由、人権──これらをどう両立させていくかが、これからの社会の課題となります。
【6】まとめ:あなたの気づきが、誰かの命綱になるかもしれない
宗教的虐待は、殴る・閉じ込めるといった“目に見える暴力”ではない分、気づきにくく、誰にも相談できないまま深刻化しがちです。
けれど、もし周囲の誰かが「これって本当に大丈夫?」と声をかけることができたら、その先に道が生まれることもあります。
信仰と虐待の境界線を、私たち自身が「問い直し続けること」。
それが、見えない苦しみを受け止める社会への第一歩になります。
