■ きっかけは“直感的な違和感”だった
近年、SNSや掲示板で拡散されるデマの中に「何か不自然に整いすぎている」文章や、「やけに関係なさそうな情報をつなぎ合わせた」説が増えてきたと感じたことはないだろうか。
それは単なる偶然ではないかもしれない。
実は今、誰かがAIを使って、“それっぽく見えるデマ”を量産している可能性が指摘されている。
特定の都市や人種、宗教、食文化、教育制度など──
一見無関係な情報を繋ぎ、あたかも“隠された計画”が進んでいるかのように演出する。
その手口は高度化し、情報リテラシーの高い人ですら一瞬惑わされるほど精巧になってきている。
■ 生成AIは“らしさ”を作るのが得意すぎる
AI(特にChatGPTやClaudeなどの生成モデル)が得意とするのは、以下のような言語能力だ:
- 複数の情報を補完しながら一貫したストーリーに整える力
- 「報告風」「専門家の言葉風」「一般市民の不安風」など語調の模倣
- “実際にありそう”と思わせる構文パターンの自動生成
例えば、「移民政策」「給食制度」「教育の変化」といったテーマが組み合わされると、次のような“フェイク構文”がAIで簡単に生成される。
「来年度から◯◯市の公立学校はすべてハラル対応になるらしい。市議会の決定で決まったと聞いてる。」
この構文には「誰が?」「いつ?」「どの制度?」という具体性が欠けている一方で、
“知人から聞いたっぽい語り口”と“聞き捨てならない内容”の組み合わせにより、不安と拡散が起こる。
なお、AI(ChatGPT)に聞いたところ、下記返答が帰ってきた。
ChatGPT(4oモデル):
「誰かから聞いた風」や「現場っぽい語調」は、生成AIの最も得意とする“模倣”の領域。
つまり、“ウソをそれっぽく言う力”が人間を超え始めているのだ。
■ 実際に確認された事例:生成AI × デマの兆候
専門家や大学機関の研究、個人の検証から、次のような傾向が浮かび上がっている。
◆ 越前功(情報学研究者)の指摘
- 改ざん動画やフェイクメディアの自動生成がすでに可能になっており、「見破れない偽映像」の拡散が進んでいる
- 「真実のように語られるが、誰も事実を確認できない」構造が増えている
(🔗JSTインタビュー)
◆ NewsGuard の実験
- 複数の生成AI(GPT-3, Bard 等)に対して「あるデマを説明して」とプロンプトを与えたところ、約32%が“説得力のある嘘”を堂々と生成した。
- その中には「ワクチンにマイクロチップ」「移民が土地を買い占めている」などの構造的陰謀論も含まれる。
(🔗Diamond 記事)
◆ 個人検証 note より
- 実際にChatGPTに誤情報を含む構文を要求したところ、「それらしく補足・接続」された文が返ってきた。
- 正しい情報と誤情報を“文脈上の一貫性”でまとめて提示するため、誤解が非常に起きやすい。
(🔗note記事例)
■ 誰が、なぜAIでデマを作るのか?
もちろん、AIが勝手にデマを流しているわけではない。
その背後には「誰か」がいる。そして、目的もある。
🧨 動機として多いのは…
| タイプ | 目的 |
|---|---|
| アクセス稼ぎ系 | SNSや広告収益を目的に、過激・不安・怒りを誘う情報をばら撒く |
| 思想誘導系 | 特定の移民政策・宗教・政党に不信を抱かせるためにAIで構造的に組み立てる |
| 扇動・陽動系 | 他地域の混乱を装う、または別の話題から目をそらすために利用されることも |
つまり「真っ赤な嘘」よりも、“本当の情報をそれっぽく組み替えた”不完全な真実の方が危険なのだ。
■ 考察:AIがデマを生む時代、私たちはどう構えるべきか?
生成AIは本来、知識を補完し、人間の創造性を広げるためにあるはずだ。
しかし、その**“補完力”が逆に、悪意ある者にとってはフェイク構造を作る道具にもなる**。
とくに気をつけたいのは以下のポイント:
① AIは“ありそうな因果関係”を無限に創れる
→ 本来無関係な「給食」「移民」「教育方針」などの情報をつなぎ、あたかも因果があるように見せる
→ SNSではその“シンプルなストーリー”が一番バズりやすい
② 拡散には“意図的な静かさ”がある
→ 今のAI利用者は「はっきりとした嘘」より「曖昧な不安」を撒いてくる
→ 拡散者も“これは事実かどうかわからないけど…”という逃げ口上を使う
③ 対抗するには「感情より構造で見る目」が必要
→ 「その投稿、なぜ今その都市なのか」「なぜその食文化と組み合わされてるのか」
→ そうした**“構造上の不自然さ”に気づける人が、防波堤になる**
■ まとめ:構造が読めれば、騙されずに済む
「最近、この都市で◯◯人が大量に…」「来年から学校が◯◯に対応するらしい」
そういった不安や怒りを誘う投稿が流れてきたら、まずは一歩引いてこう問いかけよう。
- その情報、本当に確認できる?
- なぜ今、それが出てきた?
- どんな要素が、なぜ組み合わさっている?
──AIが“それっぽい”を量産する時代だからこそ、**「構造で読む力」**こそが、最大の防御となる。
