◆ 一時的に不安が広がるのは自然。でも、異常ではない。
2025年8月下旬から9月初旬にかけて、東京・池袋のランドマーク「サンシャインシティ」で、わずか半月の間に17店舗が閉店しました。SNSでは「何があった?」「まさか経営不振?」といった声が飛び交い、不安の空気が広がっています。
ですが――落ち着いて見てみると、こうした「大量閉店→新装オープン」サイクルは、むしろ商業施設の進化において定期的に起こるプロセスであり、決して異常事態とは言えないことがわかってきました。
この記事では、
- なぜこんなに一気に閉店したのか?
- ほかの施設でもよくあることなのか?
- 生活者としてどう捉えればよいのか?
を丁寧に解説しながら、「ただの不安」で終わらせない視点を共有していきます。
◆ 半月で17店舗閉店――何が起きていたのか?
まず事実確認から。サンシャインシティの公式サイトと報道によると、2025年8月15日〜9月1日までの約半月間で合計17店舗が閉店。
◯ 閉店した店舗の内訳:
- 飲食店:10店(大阪王将、SUBWAY、サラディッシュ、ロメスパバルボアなど)
- アパレル・雑貨:7店(coca、coen、LOCK YOUR HEARTS、ハニーシナモンなど)
いずれも地下1階~地上3階のショッピングモール「専門店街アルパ」に集中しており、「サンシャイン60」の4階にもカフェが1店閉店しています。
SNSではこんな反応がありました:
「こんなに一気に閉まるなんて、やばいでしょ…」
「テナントの都合だけじゃなくて、施設側の意図があるのでは?」
◆ 運営会社の公式回答:定期的なテナント入れ替え
実際にJ-CASTニュースが運営元のサンシャインシティに取材したところ、
「定期的な店舗入れ替えのタイミングです。11月には多くの新店舗がオープン予定です。」
との回答がありました。さらに、9月26日には新業態「スターバックス ティー&カフェ」の出店も公表されています。
つまり今回の閉店ラッシュは、戦略的な再編であり、空き区画が生まれて終わりではないということです。
◆ 他の施設でも似たような現象は起きている?
この疑問に答えるため、信頼できる専門メディアと業界関係者の発言をもとに、ショッピング施設における「大量閉店」の実情を調べてみました。
✅ 専門メディア①:Retail Dive(アメリカ小売業界専門)
2025年2月時点で、米国では閉店数が出店数を上回っているという統計が出ており、
- 閉店:約9,900件
- 出店:約7,700件
飲食チェーンやアパレル、日用品など幅広い分野で「構造改革型の閉店」が進んでいます。これは一過性ではなく、業界全体の最適化トレンドの一環とみられています。
✅ 専門メディア②:CBRE(世界的商業不動産運用会社)
欧州のショッピングセンターを対象とした分析によれば、テナントの入れ替えは、
- 家賃交渉
- 商業ゾーニング(配置の再設計)
- 賑わい創出
などを目的とする**「戦略的な流動性」であることが多いとのこと。大量退店はマイナスではなく、再構築のサイン**であるケースも多いそうです。
✅ 学術論文:ナイジェリア都市のショッピングモール研究
テナントの高い入れ替え率には「家賃設定」や「隣接店舗との相性」が大きく関係しているとされており、日本でも同様の背景がある可能性があります。
◆ 個人の声:やっぱり「寂しさ」や「不安」はある
一方、こうした流れに対して、生活者目線では不安がつきまとうのも事実です。
💬 記者による体験談:
「サンシャイン60通り、知らぬ間に“スカスカ”になっていた。通い慣れた景色がなくなっていて、寂しくなった。」
💬 SNSユーザーの声:
「あそこがなくなったら、あのルート通らないかも…」
これは単なる“お店の話”ではなく、個人の記憶や生活ルート、習慣が変わるという心理的インパクトでもあるのです。
◆ では、私たちはどう受け止めるべきか?
今回のサンシャインシティの例のように、「短期に大量の店舗が閉まる」ことは、
- コロナ後の商業再編
- 賃料調整
- 施設側のリブランディング
といった構造的背景によるもので、“異常事態”とは言いきれないことがわかります。
とはいえ、地域住民や常連客にとっては、「寂しさ」「変化への不安」はリアルな感情です。
◆ 補足:テナント家賃は実際どれくらい上がっているのか?
では、そもそも商業施設のテナント家賃は、この数年でどのくらい変化しているのでしょうか?
実は、大手リテール不動産業者や国際的調査機関のデータを参照すると、「上昇トレンドにある」とはっきり言えます。しかも、単なる物価上昇やインフレだけではなく、「テナントの入れ替え=家賃見直し」そのものが戦略的に行われているケースも多いのです。
🔹 東京全体での家賃上昇(JLLのレポートより)
- 2024年末時点で、東京の小売施設家賃(1階店舗)は坪あたり月額98,714円まで上昇。
- 前年比で12.2%増という明確な上昇傾向があり、なんと11四半期連続で上昇しています。
これは「一部の高級エリアだけの話」ではなく、東京全域の市街地・商業施設で広く起こっている現象と見ることができます。
🔹 多層階型モールでも上昇が継続(Savillsの分析より)
- 2025年前半の調査では、1階店舗の平均賃料が前期比+3.0%。
- さらに注目すべきは、**2階以上のテナント賃料も+4.3%上昇(前年比+2.8%)**というデータ。
- この動きは、まさに「サンシャインシティ」のような多層型ショッピングモール構造に直結しており、テナント側の家賃負担が増していることを示唆します。
🔹 銀座などの高級地ではさらに顕著(Cushman & Wakefieldより)
- 銀座では2024年〜2025年にかけて、テナント家賃が前年比+25%の急上昇。
- 表参道でも+9%と、都内中心部は軒並み家賃水準がパンデミック以前を超えて上がってきています。
これは一部のラグジュアリーブランドが「旗艦店維持のために高い家賃を払ってでも立地を確保したい」と考える背景にもつながっており、家賃が“施設のブランド力”の物差し”にもなっていることが伺えます。
🔎 ここから読み取れる「静かなプレッシャー」
ここで注目すべきは、こうした家賃の上昇が店舗オーナー側だけでなく、テナント事業者にとっても“静かなプレッシャー”になっている点です。
- 数年契約のリースが更新されるタイミングで家賃が見直される
- 収益率の悪化や人件費の高騰と重なる
- 結果、更新を見送り閉店という選択肢に傾く
特に中堅アパレル・飲食系チェーンにとっては、少しの上昇でも“撤退理由”になりうる現実があります。
そしてこれは、「閉店=客離れ」というよりもむしろ、
「家賃に耐えられない店舗から順に整理され、より収益性の高い新業態へと入れ替わる」
という**“都市型モールの進化メカニズム”そのもの**なのです。
💡 家賃上昇は「変化の引き金」であり「再編のドライバー」
つまり、今回のような一斉閉店は、外から見れば「急な変化」「寂しさ」に感じられる一方で、
- テナント契約満了+家賃見直しのタイミングが重なった
- モール側が集客力強化のために再編を進めた
- 出店希望側と再契約・業種調整が水面下で進行中
という**“裏の台所事情”が動いているケースが多い**のです。
もちろん、すべての閉店がそれに当てはまるとは限りませんが、
- 家賃上昇
- 消費行動の変化
- テナント戦略の見直し
という構造的なプレッシャーが常に存在しているという前提を持っておくと、変化への理解が少し深まるかもしれません。
◆ まとめ:変化は常に起こる。でも、それを知ることで安心もできる
サンシャインシティで起きた「17店舗の閉店」は、たしかにインパクトのある出来事でした。でも、それは消費と空間の再構成が進む時代の縮図とも言えます。
不安を感じたら、まず「なぜこうなっているのか」を調べてみる。すると、単なる“消えた風景”ではなく、「次につながる余白」だったことが見えてくるかもしれません。
